worksは8/24に更新しました.

好きな人について

好きな人は、こういう人だ。
ということを形容詞などで表しても、
なかなか伝わりにくい。
 
よって、
自分はこういう人が好きなのだ
という自覚も、また難しい。
 

 
ところが、
週刊連載するマンガ家の
カラー作画を撮影した動画を
見つけてみていたとき、
運良く、僕は好きな人をみつけた。
 
そのマンガ家のインタビューを
具体的に紹介しながら説明したい。
 
下書きを終えた頃、
どんなところがポイントなんですか、
と編集者が質問する。答えが
「なるべくこの下書きをやっている間に、
やる気を出すんです」
 
…うわーこの人マジか。
これが学校や会社の中であったら、
叱られるに違いない。
 
仕事をする上で
「やる気」は当然あってしかるべきもの。
少なくとも、やる気がなくても
一応やる気があると、言っておくこと。
そう思うのが一般的。
 
特にマンガ家なんて、
好きでなる職業なんだから、
なおさらだ。
 
しかし、そうではないようだ。
この人は。
 

 
他にもこんなやりとり。
 
「作業は多いので集中力が持つように、
(最初のペン入れは)簡単に」
…そのやり方は昔からなんですか?という
編集者の質問に対して
「えーとね、、そうでもないですね」
 
画材を紹介するときに
「色はアクリルですね」といった絵具が
新品。。。使い込んだ感ゼロ。
 
画材を選んだ理由として
「一番大きな理由は、目についたから。
それが一番大事ですね。」
 
「色を決めるのも決まりはなくて…」
「これ、上で、なんかうろうろして
見つけた筆です、
もしかしたら、これ用の筆じゃないかも。
こういうときに使う筆じゃない
というご指摘があったら、
その通りです、と。それ用じゃないです。」
 
なんてことだ。てきとうだ。
絵にそこまで執着心のない僕は
胸に深く共感を覚える。
 
編集者の質問。
他の先生(マンガ家)によっては
巻頭カラーが息抜きとか、
楽しいという声がありますが。
 
「いやーすばらしいです。」
「好きなんだろうな、というセンセイいますよね。
自分は配色、混色、どれにも才能がないんですよ。
主人公の髪の色も
決めてはいるんですけど、飽きるんですよね。」
 
「ネームがピーク。
一番最初の作業がピークなんで、
あとはどんどんテンションが下がっていく。
そのあとの作業が面倒くさくならないように、
工夫はするんですが」
 

 
はい、参りました。
好きです。
 
使い古した道具、
こだわりの作業方法や工程、
こういうものが、ほとんど、
その人を落ち着かせるためだけの
単なる執着なんだという、
アンチにともとれる。
 
そのマンガ家は、
普段作業中はテレビをつけたり、
おしゃべりしたり、
雑然としているらしい。
 
作業は集中して、かつ楽しむという
ほとんど修行のような精神的衛生を
一般的にはよしとするものだが、
「実際」はそうでもないと。
 
美談にしかならないようなことだけを
本当に人が、続けられるわけない、
どこかで、人間なんてそんなもんだろう、
という感覚を受け入れている感じ。
 
真面目でちゃんとしてるとこも、
もちろんあるけど、それと同じくらい
あるいはそれ以上に
煩悩を持つ自分もいる。
それをしっかり受け止めている。
 
これがぼくの好きな人だろうな。
(本当にストイックにできる人も
いるんだろうけど)
 
ちなみにそのマンガ家は冨樫義博。

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