車内にて
電車に乗っていると、
いろんな人がいて面白い。
ひとりの人はそうでもないが、
家族連れがとくに面白い。
大袈裟にいえば、その家の
閉じられた世界を
垣間みれたような気がするから。
面白かったのは、
こんなこと。
*
眼鏡をかけた男の子が
お父さんとお母さんの間に
はさまれて、
本の中に顔を埋めていた。
彼らが乗り込んでから、
ちょうど6駅目、男の子が
本から飛び起きるように顔を上げて、
「あ!ぼくだ!」と叫んだ。
ぼくを含めて周囲は驚いたが、
彼の両親は冷静な顔で、
「あと二駅よ。」という。
少年は、再び本に顔を埋める。
こういうことが、家では
よくあるんだろうな。と思う。
他にもこんなことが。
両親とふたりの姉妹。
6才と3才くらい。
お姉ちゃんとお父さんが
算数の話をしている。
お母さんとあやとりをしていた
妹が割り込んで、
「ごーたすごーたすって誰?」
という。
とっさに姉が
「イスタンブールに住む
モンスターよ!」
といい、妹を泣かせてしまう。
*
こういう面白さは、
まったくの他人とは
作り上げることはできない。
何年も生活をともにした
ものたちの間でしか
できないもの。
密閉させて熟成発酵して
立ち昇ってくる
濃い匂いみたいなもの。
いいなあ、と思って
席を立つ。
乗り換え駅に到着したようだ。
2013/03/11