worksは8/24に更新しました.

ぼくたちはお客さん

本屋で、「人生はニャンとかなる!」と、
人生はワンチャンス!」を見つけた。
前から電車内広告で見て知っていたけど
あんまり手にとろうとは思っていなかった。
 
こういうのはちょっと…と思って。
でも、かなり売れているらしい。
シリーズ累計106万部と書いてある。
それを見ると興味をそそられるし、
「こういうのはちょっと」と思っていた
自分が間違っていたのかもしれない、と
思いあらためてしまう。
 
これは名言集とか格言集みたいなもの。
そこにかわいい猫や犬の写真がふんだんに
使われている。
 
全ページにミシン線が入っていて、
ここぞというページを切りとって
プレゼントもできるし、
部屋に貼って掛け軸みたいにすることも
できる。
 

 
名言は、過去の偉人たちの残した言葉。
 
ぺらぺらめくっていると、
グーテンベルグのページがあった。
 
肝心な名言の部分は忘れたけど、
そこに付いていた解説が面白かった。
 
グーテンベルクは活版印刷を
世界で初めて作ったドイツ人。
 
それまでの本はすべて手書きで
写本されていたみたい。
故に、本の価値は今よりも比べ物に
ならないくらい希少で貴重なものだった。
 
しかし活版印刷の技術を使えば、
もっとたくさんの人と共有可能になる。
これに興奮するグーテンベルクではあるが、
いざ、となると、技術の公開を
ためらい踏みとどまったのである。
 
なぜか。
 
価値のない本がたくさん出回って
しまうことを、恐れたためなんだって。
 
当時の本に対する価値が、
それほどまでに高いものだったのか、
と思って仰ぎみてしまう。
 
現在はむしろその逆に近い。
どんな人であろうと、そんなにお金がなくても、
内容の質が高くても、低くても、
とりあえず本の形に製本することができる。
 
なぜなら、ぼくたちは作家である前から、
「お客さん」だから。
 
この様をグーテンベルクが見たら、
どう見えるだろうか。
嘆かわしいだろうか、それとも
喜ばしき未来なんだろうか。
 

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