ほこりの魅力?
学生の頃、サークルの部室に
入り浸っている時期があった。
散在していたモノを一掃して、
誰が持ってきたか、
ホットカーペットやこたつが設置され
冬の季節にはありがたい場所となった。
しかし、二週間もすると、
なんだか部屋が鬱屈とした雰囲気を
かもしだすようになった。
本も作品もその他の雑多なものも
しっかり整理されているはずなのに
なぜだか室内が淀んでいる。
畳をぽんと叩くとしろい靄がたった。
これはホコリだ。
さっそくほうきでバリバリ掃くと
砂やら綿ボコリやら、山のように
集まった。
そして鬱蒼としたムードも消えていた。
すごいなあ人間の目って、
ホコリまで感じとれるんだ
という経験であった。
とにかく、ほこりというものが
好きではない。
ほこりが全くない場所という
ところに憧れる。
アルプスの大草原に布団を敷いて、
すーうっと深呼吸してみたい。
こういう考えが現代的な文明を
発展させる基盤となっているのだろうか…
*
エリナー・ファージョンという作家が
「本の小部屋」というシリーズを書いており
岩波少年文庫から「ムギと王さま」などの
タイトルで出ている。
この作者は少年時代に自宅にあった
「本の小部屋」にこもって、
よく本を読んでいたのだという。
「まるで宝くじか、
たのしい掘りだし物の世界」で、
「わたしに魔法の窓をあけさせてくれたのは
この部屋です。」という。
さらにこの部屋の魅力だったのが
「ほこり」。
鼻にほこりがつまり、
目が痛くなり
きゅうくつな姿勢や
むっとした空気でのどを痛めながらも
本に夢中になる。
ほこりがあったからこそ、
あの部屋が特別であったし
空想をふくらませてくれた。
そして、こんな詩を引用している。
このしずかなちりこそは、
紳士に淑女、
若衆にむすめ、
その笑い、ちから、ため息、
おとめらの服、まき毛。
*
そういう気分はとても分かるけれど
自分の部屋を同じようにしたいか
というと嫌だなあ。
本で埋め尽くすのはいいとして、
やっぱりホコリは払いたくなる。
ここに時代の変化がありそうだ。
2012/11/02