worksは8/24に更新しました.

視点ハック

「知ってしまったがゆえに、
もう分からない…」
 
と、いうことがある。
矛盾しているようだけど。
 
分かりやすい例えだと、
ネタばれがある映画や小説。
あと、クイズとか。
 
そういうのって
本当の驚きは、一度目にしかない。
初見の感動は以降もう味わえぬ。
知っちゃうと。
 
他にも、
子供のころの気持ちもそう。
 
当時は、いまより
知識も行動範囲も狭いので、
想像力や、強い感受性で
知らない(見えない)事柄を
埋めようとしていたんじゃないかな。
 
どんなかんじだったか。
 
…どういう世界観で暮らしていたのか、
周りの大人とは、
どういうふうに仲良くしてたのか。
 
そういう子供時代の感覚を
ことごとく失っている。
 

 
そんな自分が、
子どもにとって面白いと
思えるコンテンツを作ろう、
と思うと、
アイデアの取捨選択の分岐に立った時、
どういう判断で進めればいいか、
よくわからないことが多い。
 

 
だけど、一回だけ、
あ、超わかった!という時があった。
 
それは、とある保育園の先生に
製作中の絵本を
読み聞かせをしてもらった時。
 
喫茶店での打ち合わせでもなく
自分の作業机でもない場所、
子どもたちが、先生たちに
促されて、がやがやと入ってくる
ホールで。
 
素直に従う子、いたずらする子、
いたずらされて泣く子、
座らず、先生に注意される子、
隣の子と、こそこそ話す子
ぼくたち大人にちょっかいを
かけてくる子。
 
今にもはじけそうに、
ぎりぎりのところで集まり
座っている子たち。
 
この子たちに、今から
自分の机の上で作った
「机上の空論」ならぬ、
「机上の絵本」の読み聞かせをする…
 
と思うと、緊張して背筋が伸びる。
果たしてあれでよかったのか、
と疑問が膨らむ。
構成を考えなおしたい衝動に
襲われる。
 
急に、
園長先生がひとさし指を立てて、
「これなんぼん?」
と聞くと、今までばらばらに
向いていた子たちの関心が
一同に集まる。
 
「いっぽーん!」
 
その指を後ろに隠したり、
両手で本数を増やしたり、
減らしたり、
指を高速移動したり、
まるで魔法使いのごとく、
子どもたちを捉えてしまう。
 
臨場感作用に加えて、もう一つ、
ぼくにとって効果があった要因は、
この園長先生と子どもたちとの
調和が、超とれていること。
 
そんな中、
絵本の読み聞かせが始まると、
子どもの反応はもちろんのこと、
園長先生が、読みにくそうにしたり、
あえて工夫をして読み方を
変えてくれたり、
つまり、
調和が乱れた瞬間があって…
そういう一つ一つが
ぼくにとっては、
刺激的な経験だったなー。
 
調和の乱れ=絵本の改善ポイント、
ということになる。
 

 
言い過ぎかもしれないけれど、
園長先生を通じて、こどもたちの
感覚が手に取るように分かったような
気分になった。
 
実際そのあとの構成の改訂は
効果てきめんだった。
 

 
自分のカバーできる範囲は
思っていたよりも狭いんだけど、
だからこそ、
「立場」をハックすると
視点がガツンと変わって
見えてくることがある。
 
自分にはないが、
この人のつもりで、
実際その場に立ってみると、
理屈以上に、よくわかることがある。
 
臨場感を伴う視点ハックは、
定期的に必要だなーと思う。。

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