誰にも知られない時間
誰にも知られない、自分だけの時間と
空間っていうのがある。
代表的な例では、トイレの個室。
つい知っているような気になるけど、
「本当のところ、どうなんだろう」
って思うことがある。
かならず座ってする人。
本を読まないと落ち着かない人。
ウォシュレットじゃなきゃだめな人。
前からふく人。後ろからふく人。
などなど、
僕自身当然と思っていることでも、
他の人からすると、意外に思うような
ことだってありうる。
*
それと同じように、
イラストレーターなどの
絵を描く仕事をしている人は、
描きながらどうしているのか。
描かれた絵は、公になるけど、
それが描かれるまでの過程については
誰にも知られることはない。
描くのはたった一人の時間だから。
黙々と一日机に向かっているという
イメージがあるかもしれないが、
本当にそうか。
それは本人がしゃべらない限り、
解き明かされることのない秘密。
*
これは、言いたくないんだけど、
特別にぼくの秘密を教えてあげよう。
絵を描きながら、
最近よくしてしまうのが、ものまね。
ものまねといっても、
ただのものまねじゃあございません。
喪黒福造のしゃべり方を模すのです。
*
絵は黙って描くのがいいと
思われるかもしれませんが、
ラジオから知っている曲が流れて
つい口ずさんだりしても、
かわらず絵は進むものです。
つまり、絵を描く脳と、口を動かす脳は、
同時並行ができるわけです。
あるラジオ番組で喪黒福造の
しゃべり方を模してコーナーを紹介する
番組がありましたが、それが、なんとも
心地いいしゃべり方だったのです。
これは、と思わず膝を打ちました。
わたくしもマスターしなければと。
なぜかは分かりません。
せっかくの一人の時間なんです、
そうしたいからそうするまでです。
「わたしの名は喪黒福造。
人呼んで笑うセールスマン。
ただのセールスマンじゃあございません。
わたしの取り扱う品物はこころ。
人間のこころでございます。」
今後発表するわたしの絵は、
喪黒福造をやりながら描いた、と
想像してみてください。
ほーっほっほっほっほ。
みなさんもどうぞ。
2015/01/29