絵本の演出効果
最近はもっぱら絵本を買ってしまう。
ちょっと前までは、一瞬で自分を
変えてくれる啓示的な本との出会いを
求めて、海外文庫や新書などを
主に見ていたけど、最近は絵本。
読んでいくと、構成のすごさが
見えてくる。
絵本はなんとなく描かれているようで、
実はとても緻密に構成されているのだ、
ということが分かってくる。
たとえば、『ねえさんといもうと』という
姉妹だけが出てくる絵本がある。
一般家庭にいる普通の女の子たち。
それも、何気ない日常を描いている
だけなんだけど、読むと、
ああいいなあ、と心にのこる。
さて、この「ああいいなあ」は
どこからやってくるのだろう。
*
それを確認するために、
ちょっと比較してみよう。
仮に、ある一日の様子がまとめられた
アルバムの写真を順に並べて、
セリフをつけたら絵本になるか、
といったら、なるとは限らない。
アルバムのような偶然によって起きた
幾つものの出来事というより、
絵本は「ある気持ちの感触」を伝える為に、
必然的な状況を(それも削ぎ落として)
セッティングする構造作りから始めて
いるのだと思った。
実際に子どものいる親からすれば
生まれた時から子どもたちの
文脈(性格や体験)を知っているから、
なんとはない一日にも、物語を
感じるかもしれない。
でも絵本のキャラクターは
絵本の中だけでしか生きられない。
どういう気持ちで、どんな性格をもった子が
どういう動機で、なにをするのか。
これを短い導入で、
自然に語らなければいけない。
さらに、彼らの行動が、
「ある気持ちの感触」を伝える為の
表現として着地しているかどうか、
ここを整えるのが実にむずかしい。
良い絵本ほど、なんだ簡単じゃないか、と
思わせる程すんなりと描かれている。
あたかも、ずーっと前からこういう子が
いるんだなあっていう気になる。
*
そんな視点で、ぼくが最近出会った
面白いと思った絵本はいくつか
読書感想文。
『ねえさんといもうと』(福音館書店)
作ゾロトウ/絵アレキサンダー
子どもにも、いろんな子がいて、
いろんな兄弟や姉妹がいるけど、
ここに出てくる姉妹は、
もうほんとに模範的で素直でかわいい。
いま「模範的」っていうのは「個性の良さ」
に対して、あんまりよろしくない感じに
とられるかもしれないけど、
これを読んだ子は心がほぐされたように
「良い子になりたい」って思うだろうな。
小さい女の子って特に「お姉ちゃん」に
感化されやすいものだと思うし。
『ジャイアント・ジャム・サンド』(アリス館)
作絵ジョン・ヴァーノン・ロード
これは衝撃的な絵本。
いきなり4百万匹の蜂が町に襲いかかる
ところから始まる。
その対応策として、巨大ジャムサンドを作り、
蜂をいっきにおびき寄せてつかまえよう、
というんだから、奇想天外にもほどがある。
でも、小麦粉からこねて、かまどで
焼くまでの行程がとってもよく
描写されていて、作り話だとは知りながらも、
のめり込んで眺めてしまう。
でき上がった巨大なジャムサンドに、
4百万匹の蜂が集まり、
待機していたヘリコプターから、
サンドするパンが落とされるシーンは
圧巻。こんなに楽しい絵本はなかなかない。
*
まだまだ紹介したいけど、またこんど。
整理すると、絵本においての演出の仕方に
今ぼくは関心を寄せている、ということでした。
2015/01/17