坊ちゃんの魅力
正直でいるってむずかしいよなと思う。
それと、自分の思ったことを、
最後までちゃんと思い通すってことも
難しい、と思う。
たとえば数人で話していて、
自分がなんだかな、と思っても
いえないことが多い。
それからなんとなく思っていたことを
しゃべったとき、
うまくまとまらないから、
むにゃむにゃになってしまって、
逆にロジカルに話せる人に、
そうじゃなくてこうじゃないか、
といわれると、
うん、そうだった。と簡単に折れてしまう。
*
正直でいるって、時として
空気が読めない奴。
調和がとれないやつということになる。
ああ、ここで協調しておかないと
ちょっときらわれちゃうぞ、
みんなからの賛同意見が多くないと、とたんに
気分がおっこちてしまうから、どうしよう、
ああ、相手にいやな思いをさせちゃったな…、
みたいな、やさしさは、「ひ弱」になってしまう。
そうなるのは、容易い。
優しい奴ってのは容易い奴のことをいう。
*
夏目漱石の「坊ちゃん」を読むと、
非常に心強くなれた気がする。
小学校の頃にはじめて読んだ時から、
不思議と読後感に
力を得たような気分になれる本だった。
その秘密は圧倒的な正直さ。
自分がそう思ったから、自分はそうなんだ。
馬鹿正直な故に正義のヒーローのような
(最近、正義のヒーローっていいイメージない。)
悪い奴をこらしめるものになる。
けれど、自分がいいことをしたはずなのに、
周りからみると、むしろ向こう側にいる人の方が
善良に見えていたりして、
自分のほうが悪者になっていることがある。
それでもなお、自分への正直さをすてない。
これではとても生きにくい。
でも、生きにくい人が多数になれば、
すこしは楽に自信をもてそうだと思う。
「自分の正直に思うことを、
空気を読まないでやってみよう。」
こういうワークショップを中学校とかで
やってみたらいい。
「自分の魅力がみつかるよ」という言い方で
「今後の学校生活がすごくやりにくくなるよ」
ときらきらした目で、言えたらいい。
「やりにくさ」を分かっていれば、
相手を肯定する目線が身に付くのだと思う。
アメリカのラブコメ映画でみるような、
「あなたって、ヘンね」という好意の寄せ方がある。
そういう空気感がいいのにな。
一見否定的に思われていることに
わくわくできたらいい。
2016/06/26