詩になるクイズ
俳句には「とりあわせ」という
考え方がある。
ある単語(季語)に、もうひとつ、
一見関係のなさそうな言葉を組み合わせて
俳句にする、という手法。
たとえば
「ところどころに力こぶ」
という文章があったとき、
どんな単語をつけると効果を生むか。
…なんてことを考える。
土肥あき子「夜のぶらんこ」からの
引用で、この場合は
「芋虫」としている。
「芋虫のところどころに力瘤」
*
一つの俳句から、
モチーフ(季語)と装飾語に分ける事を
ぼくは勝手に「俳句の因数分解」と
呼んでいるんですが、
それって、場合によれば
クイズになるんです。
「ところどころに力こぶのできる
生き物ってなんだ?」
こたえは「芋虫」
*
クイズのクイズたる資質は、
答えの共感度がかぎりなく100%に
近いことである。
答えを聞いて「あ、なるほど」と思えるものが
クイズの答えであるべき姿。
*
逆に考えると、クイズだって詩になる
可能性がある、ということになる。
谷川俊太郎「詩ってなんだろう」
柳田國男「なぞとことわざ」から
詩になりそうなクイズを引用してみます。
「深い谷間から、
ふえをふいて出てくるものは?」
この答えをタイトルとして、
表記すると、このクイズはとたんに
詩のような顔をする。
「おなら」
深い谷間から、ふえをふいて出てくる
…じわじわくるものがある。
*
しかし、この答(あるいはタイトル)を
「田舎の笛吹少年」とすると、どうだろう。
とたんにイメージの広がりが失われる。
あまりにお互いのイメージが近しいので
面白さがない。
とりあわせ、とは関係のなさそうなものが
つながるから、脳内で
ぱちんとイメージの火がはぜる。
*
「まんなかに黄色い川が流れてる
美しい白い山はなんだ。」
これも、仮にゴッホの絵とかいうと、
あー、そんなのがあるんだーと
思うに留まるが(実際は無いと思うけど)
「たまご」というタイトルをつけると
詩になる。
*
「若いとき白髪で、
年をとって黒くなるもの」。
これに、医療界における新しい症例。
とすると、イメージはつまらない。
ところが「筆」とすると
これもまた詩になる。
*
「寒くなるほどあつくなるもの」。
これも自販機の缶コーヒー。と答えるか、
「雪国の氷」だというかで
大分印象が変わる。
*
この「とりあわせ」効果ってとても
面白い。
特にクイズを詩としてみるのが、
ぼくには余計に面白く感じる。
詩の言葉というのは、
普段使う言い方とは少し違うし、
もしかすると、個人的な主観や
経験、技術に理解は依拠するかもしれない。
でもクイズは、誰もがわかる、
意外なとりあわせである。
要するに、誰もが「なるほど」と
面白がれる詩の表現になる。
小学生向けに考えてみたい。
2017/11/29