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好きなこと尽くし

もしも、自分の家に、
実はまだ一度も開けたことのない扉、
降りたことのない階段、
足を踏み入れたことのない部屋が
あったとしたら、
…どうだろう。
 
わくわくが止まらない。
 
家の外に出ると近所の
丘なりになった雑木林に
背の高い古城が
立っていたり、
道を行くと突然、
山中になって古い温泉宿が
あったり。
 
近所なのに、全然しらない場所に
行けた新鮮な気分を味わう、
という夢をたまに見る。
 

 
季節の始りにあるような
気持ちのいい新しい匂いを
思いっきりかいだときのように
さわやかな心地なんだけど、
目が覚めたとたんに、
平坦などんより感が戻ってくる。
 
現実には全然そういうのがないから、
まったくつまらない。
 
よーく知り尽くしている、
と思っている場所に
まだ知らない部分があった、
というのは、
前人未到の遠い異国へ冒険するよりも
冒険のように感じる。
 
全然知らない場所に
来ているはずなのに、
いつでも歩いて帰れる距離という
ところが興奮ポイントだ。
 

 
それとはまた別かもしれないけど、
大きなデパートを歩いている時。
 
洋服を売ってる店舗をのぞいて、
壁の辺りに服がたくさん掛かっている
ラックがあって、
そこをかき分けると見ると、
なんと向こう側が
誰かの家のクローゼットに
なっていた。
 
あるいは
洋服ラックのかき分けると
ふかふかでふわふわ素材のベッドの上。
 
公の場所に、ものすごく個人的な
スペースが唐突に現れると、
これまたどきどき、わくわくする。
 

 
あとは、
今まで知らなかった兄弟が
実はいたとしたら、
というのにもわくわくする。
 
いないはずの姉がいた、とか、
妹がいたとか、弟がいたとか。
 
うお!あれ?
そうだっけ?いたっけ?
みたいな夢を見ると、
起きた時残念な気持ちになる。
 

 
そういえば、
自分の本棚を見ると
見おぼえのある本ばかりが
並んでるはずだけど、
なかに、見おぼえのない一冊が…
 
『なぞの娘キャロライン』
カニグズバーグ著。
 
ざっくりと概要をみると
いないはずの姉が、突然やってきた
という話。
 
なんという!
よし、読んでみよう。

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