夏の一日
これから、するのは、
ぼくの話ではありません。
あなたの話です。
そうです、これを読んでいるあなた。
あなたのまわりには
まあまあ良いことがあるのに、
漠然とした心配がありますね。
した約束、ちょっとした会話、
目にするニュース、
早めにしなくちゃと思う、など
そんな大したことのない集積が
なんとなーく、しがらみとなって
あなた自身をしばりつけている…?
という、心配。
そして、それが、
誰かの為である、と、
思っていますね。
そんなときは、
体が汗をかくまで十分に
おふろへ。
上がったら、
「メール(スマホ)チェック」ではなく
しばらく、
布団にどさっと倒れてみましょう。
*
そこで目を閉じて
今から引用する詩のことを
少しだけ考えてみましょう。
夏の一日(メアリー・オリバー)
(最初は略)
わたしは、祈るということは
よくわからない。
でも、草を分けてゴロンと腹ばいになり、
あるいはひざまづいて、
草にかこまれて一心に
注意することならできる。
ただぶらぶらと
野原をのんびりあるくとか、今日は
まさにそうやってすごした。
ほかに何を
すればよかったというの?
わたしたち生きものは、
いずれみんな死ぬ。
しかも
きまってそれは早すぎる。
教えて、あなたはなにをして
すごすつもり?
たった一度の、かけがえのない
未発見の一生を!
「ガラガラヘビの味」
アメリカ子ども詩集
アーサー・ビナード/木坂涼訳
*
誰にも頼まれないのに
するっていうのが一番いい。
たとえば、用事のない散歩とか。
用事のない散歩をしながら、
自分一人しか知らないことを
考える。
…
まさか、太陽が僕たちの暮らしの
「ために」ものすごい熱やら、
光を爆発させている。
なんてことはないよな。
はたまた地球が、ぼくたちの生活リズムを
作ってくれる「ために」、
回ってんじゃないよな。
沈丁花は、別に春になったことを
知らせる「ために」
生まれてきたわけでもないだろうし、
まさか、コゲラが朝の公園の
すがすがしさを演出する「ために」
鳴いているわけじゃあるまいな。
散歩して、周りを眺めていると、
あなたやぼくが、
「人のために」と思うことって
(大切なことだと思うけど、)
ちょっと度が過ぎてないか?
…と思えてくる。
人間以外って、大体
誰のためでもないことを
休む間もなく働いている。
誰の為でもないことを
あなたは何をしてますか?
2020/03/10