聞きたいのは話の続き
今回は短めに。
話の面白くさせる簡単な技を紹介しましょう。
といっても、自分もこないだ気が付いたばかりで、
実践できていないんだけど。
これは簡単で、
ひとつ自分の話したいことを簡潔に
語り終えた後に、
この一言を付け足すのである。
「この話には続きがあって…」
あるいは、
「これには後日談があってね…」
というのである。
もともと、怪談話でよく使われる定跡なのだけど、
心霊とか怖い話って、不可解なことが
不可解なまま終わることがある。
ちょっとした不明瞭な気持ち悪さを残す、
ということが怖さに合う調味料のような
ものだと思う。
さて、そこへ、
「この話には続きがあって…」
なんて言われたら、前のめりになってしまう。
聞きたい聞きたい、となってしまうではないか。
*
タクシーに女を乗せて、目的地である
住宅街に着いたが、消えてしまった。
という話があったとする。
怖さ、としてはそれで充分である。
だけど、そこまで聞くと
その女はなんだったのか、
なぜ、住宅街で消えたのか、
その目的はなんだったのか。
背景が気になってくる。
「この話には続きがあって」
と、こうくるのである。
女が消えて、しばらく動けなかったが、
ふと前の家を見ると提灯が下がっている。
通夜だ。
暑い夏で、窓も開いていたので
よく見えたのだが、祭壇にみえた写真は、
さっきまで乗せていた女と同じ顔だった。
きっと事故にあってから、家に帰れずに
成仏もしきれなかったのだろう。
そして、このタクシーでやっと帰ってこれたのだ。
そう思うと、写真の顔もすこし、
和やかにみえた。
*
「この話の続き」には、ずいぶん興味深い背景が
あるものだと思う。
2016/07/25