喰われる
虫は恐い。
近所の裏山にはハエも飛んでいる。
蜘蛛もいる。
顔に巣がかかると、
うっ、とうめき声を上げて
見えない相手を格闘する。
さながら心霊現象である。
匹敵する恐さ。
得体の知れない(みみず?の)死骸。
それに群がる蟻の行列。
彼らの何が恐いかといえば、
容赦がないところ。
動物みたいに、
脅かすと逃げるとか、
大きい声を出していれば近づかない、
とかいう心理的作戦が
まるで通用しない。
彼らは、外から何が来ようと、
獲物をとらえようとする
努力は惜しまない。
強かである。
*
新宿や渋谷に出るよりも、
所沢の荒幡富士(狭山丘陵)とかに
サイクリングに行く方がずっと
魅力的なことだと思っているのだけど、
難点はやはり虫。
海がこわいのと同じように、
未知な存在がうようよしている。
そんな気がする。
こないだは、ベンチに腰かけて
本を読もうとしたら、
指先に異様な感触を感じて、
それは痛みだった。
いたた、と思って足元を見ると、
蟻だ。
こいつ、噛みついたのか。
黙ってたら、ぼくは
こいつに喰われてかもしれない。
2012/07/18