かわいいお祈り
荒川洋治『夜のある町で』は、
お祈りのようなエッセイだと思います。
(とても乱暴に言ってしまうなら。)
読んでいてこんな文章を見つけました。
以下「おかのうえの波」という
エッセイから引用。
//
<私の文体>について書くようにとのこと。
ひよっこのぼくにも文章を書くときの
心がけのようなものはある。
①知識を書かないこと。
②情報を書かないこと。
③何も書かないこと。
ぼくは文章を書きながらこれらの条件を
肝に銘じ「いい文章になりますように」と
心からお祈りする。
//
これを読んで、
あ、お祈りしてる、と思いました。
ヘンだなあ思いました。
だって心がけって
自分の意志で支えるものなのに、
まるで神様に委ねるみたいに、
作物の豊穣を望むときのように
人智の及ばない話をしているようで
なんだか可笑しいと思いました。
冗談じゃないし、本気なことを
言っているのに、
どうしてこの人は、こんなに
可愛らしく書くことができるのだろう。
いいなあ、と思いました。
「お祈り」というフレーズを使う
新しい用途が見つかった気がして
うれしくなりました。
*
さて、自分はなにをお祈りしようか
と思って考える。
「お祈り」を使った文章や手紙などを
書きたいと思うのだけど、
何をお祈りすれば良いのかわからない。
もともと、お祈りするって、
ちょっと敷居が高かったような気が
していました。
でも宗教的な習慣がなくても、
教会に行かなくてもできるものなんだ
と思うと、もっと身近に思てくる。
……、
この作文の落としどころを
書くのに、あと20分あればと
お祈りする。。
ああ、だめだ。
もう家を出なければいけないのに
こういう無理なことは
お祈りしてはいけない。
2013/11/09