「くうき」をみつける価値
昨日続き。
「くうきのほん」では、
目に見えないけど、そこにある
くうきについて、
補集合の本の構造を利用することで
伝えようと、考えています。
*
くうきって、
よく考えたら不思議で、
どこにだってあるはずなのに、
それが、どんな形で、どんな動きをして、
どんなやわらかさで、どのくらいの重さで、
どのくらいの力をもっているのか、
くうきに対する体感イメージって
ぜんぜん掴めない。
くうきにはどんなイメージの正体が
隠れているのかを探っていこう
という内容が「くうきのほん」です。
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「くうきをとらえることに
どんな意味があるのか」
というところで前回は終わったのですが、
それを説明するために、
以下の引用をしました。
好きな本である
「T・S・スピヴェット君 傑作集」
という本(どうしても読み切れない…)
を原作とした映画「天才スピヴェット」の
なかで、印象に残るシーンがあって。
天才少年のスピヴェットくんが、
家族との誤解や、一人旅のなかの苦難の中で
いろんな気持ちを抱えながら、
車の窓のあたる雨の軌跡をみつめる。
そこで、
「水滴のいいところは、
抵抗がない方へ流れるところだ。
人間はその逆。
困難な方へ進んでしまう」とつぶやく。
くうきの動きも、
圧す方から、圧される方へ、
(抵抗の少ない方へ)動いていくだけ。
それがくうきの推進力となる。
その動きが地球のすべての生き物にとって
重要な力。
*
どうして重要かって、
なにしろ地上の生き物は、
みんな空気の底に沈んでいて、
「水をたっぷり含んだスポンジ」のように
空気を身体にしみ込ませているから。
意識しようがしまいが、空気の流れに
包まれているからなんです。
*
くうきが動くのは、
たったひとつの理由だけしかない。
くうきには、個々の主張がない。
ずっと高気圧でいたい、という理想を
持ったくうきはいないし、
雨雲に加担したり、台風にはならない!
そして、
いつか絶対にジェット気流に乗るんだ、
みたいな理想もない。
いま、ここで、動かされている推進力に
ただただわくわくしているんだろうな。
と思う。
スピヴェットくんの言う「人間」の方が
あまりに目立って人生は進むから、
ときどき目の前には困難しか感じない
ことも少なくない。
けれど、
だからこそ、くうきの方に
一歩足を踏み入れることに
価値があるよな、とぼくは思っています。
2021/05/13