迷子になるための地図
小学校の頃に、詩を書くという
授業があった。
自分自身が何をかいたのか、
全く覚えていないんだけど、
友だちが書いた一篇が
いまだにわすれられない。
ぼくの記憶で復元しているので
正確ではないけど、
「しもんの地図」(仮)
というタイトル。
てのひらには
地図がある。
ゆびのつけねの山脈から
川を下り、
指先をぐるぐるまわる
…
というようなもの。
自分のてのひらを
地図に見立てるという発想が
すばらしくて
先生も、生徒たちも
目を丸くしたようにおもう。
*
ちょっと話題は変わるけれど、
鳥瞰図が面白いと最近は思っているんだけど
地図もいい。
古本屋で、
河出書房新社から出ている
「地図」不思議な夢の旅
(1978年発行)
という本を見つけた。
ふしぎの国のアリスの
ルイスキャロルや、
谷川俊太郎は、1:1の地図
(実寸の地図、捉えようによっては
バミリみたいなものだったり)
について書いていたり。
地図というと陸を思い浮かべるが
海の地図、海賊の海図も
載っていたり、
ただ地図といっても
まじめな専門書というよりは
文学的想像力がパッと光るような
面白い一冊。
へえ、こんな捉え方の地図もあるんだ。
と。
*
ぱらぱら眺めていると、
じゃあ、こんなのは?と思う。
陸があって、海があるなら、
空の地図は?
これは天気図みたいなものか。
天気は刻々とかわるので、
地図も動的でないとな。
立体的な思考の地図は?
これは立体地図があるし、
もっといくと、模型なんじゃないか。
でも、洞窟のように、地表の地図と、
その下にある洞窟の地図とを
両義的に展開させたいとき、
パタパタ開く形の
(めくると地下の洞窟の地図が
現れるような)
地図があったらおもしろそうだな。
同じ発想でいえば、
表面は海の地図。
一面海なんだけど、
部分的にめくると、
海底の様子が見られるというもの。
沈没船とか、魚の種類とか、
海底の深さがパッとみえると
面白いだろうな。
*
ところで、
散歩していて一番わくわくするのは
知っている道と、知っている道の間に
知らない道を見つけた時。
いつもは目的のない散歩でも、
たまに「知らない小道を見つける」
というテーマで散歩すると、
ほんとに近所にでも、
まだ通ったことのない道があったりして
面白い。
これを突き詰めると、
他人の家の中をのぞきまわりたい、
という犯罪めいた領域に
踏み込んでしまうので、気持ちを
ある程度のところで鎮める。
(この人の家の中にいたら、
いつもの見慣れた景色が
全然違って見えるんだろうな、と
妄想だけにとどめる。)
という抑圧された欲求を
(妄想の)地図で発散できないかな。
家並があるんだけど、
屋根の部分をペラっとめくると
家の内部が事細かにのぞける、
という地図etc…
地図は、迷子にならないために
作られたもの。
だけど、迷子になれる地図が
あったら、ぼくはそっちを
みてみたい。
2020/10/03