熱湯をかけたい
個人的な意見だけれど、
いいラーメン屋っていうのは
こうでなきゃ、というものの中に
味やボリュームもさりながら
「お店の構造」にも理由ある。
それは何かというと、
カウンターに座ると
厨房の様子が見えるタイプの
ラーメン屋。
これがうれしい。
見ていると、
大きな鍋でふくふくと湯がたぎって
湯気が換気扇へ、ふしぎな形に
ゆらめいて吸い込まれていく。
水がずっと出しっぱなしに
なっている。
それを眺めていると、
だんだん元気になってくる。
はー、と魅了されたときにする
ため息をついてしまうくらい、
湯気好きとしては、なかなか、
たまらないスポット。
運がいいとお湯をつかった
エンターテインメントショー
掃除もみられる。
大鍋で煮えた熱湯を、
床にぽわーっとうちつける。
*
水は、お湯になると、音を変える。
注ぐときは、
じゃー、から、
ぽころろろ、になる。
音だけではなくて、
作用もかわる。
家のキッチンにあるスポンジに
水をかけてもなにも起きないが、
熱湯をかけると、
うーんと伸びをするようにして
くすみのような汚れや、
残っていたわずかな洗剤を
押し出してくれる。
あきらかに、熱湯をかけ終わった
スポンジはすっきりした顔をしている。
熱湯はほとんどの菌を
滅菌してくれる。
それが、目で見てもわかる。
匂いもきれいな無地になる。
*
家の隅々まで熱湯消毒したい、
という願望があるのだが、
ラーメン屋は、それを実現してくれる。
くすむ床がもうっとした熱い霧に満ちて
あち、あち、あち、と言ってるとこに
大ブラシで、ざっくり、ざっくり
みがくと、さながらサウナ上がりの
ような顔をした床があらわれる。
あーきもちいい。
みているこちらもうれしくなる。
ラーメンのスープも、
こころもち澄んでいるような
気がする。
2018/03/26