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子どもたちの不満

小さい子を目にする機会は少ない。
 
あるといえば本屋くらい。
絵本コーナーという子供の領域に
踏み込めばよい。
 
そこでは自分が大人だという
事実が如実にあらわれる。
いろいろと差を見つけられる。
 

 
ひとつは、我慢しないで
好きな本を買えること。
 
隣の女の子は、コレをあたしの
宝物にしたいのだと訴えるものの、
母親は実にあっさりと拒否する。
「わおうわお!わおーん!…。」
どんなに叫んでも無理だとわかると
しぶしぶ母親の後ろにくっついて
店を出て行く。
 
彼女の背中を見て同情しながら、
僕は自分の欲しい本をそっと手にとる。
それを開くと、さっきの女の子が
怒った顔で現れた。
「あんたにあたしの苦痛なんか
わからないよ」
 
買物162
 
しきりにお母さんを
呼び続ける男の子もいた。
 
「おかあさん!どこいった!」
「ここにいるよ。」
「どこ!」
「ここにいます。」…
隣の棚に移動しただけなのだが、
お母さんが突然いなくなってしまう、
という不安が、彼に何度も母親を
呼ばせるのだろう。
 
一方こちらは、
お母さんが一緒にいなくても
ひとりで本屋に来れるし、
自由に歩き回ることができる。
これ幸いなのである。
 
少しだけ昔ホームシックで
煩っていた頃の自分を思い出して、
さっきの彼に共感してみる。
 
けれど、さっきの彼は
棚のすき間から顔を出してこう叫ぶ。
「おまえに、おれの不安は
わからないんだろうね!」
 

 
本当の意味での子供の苦痛を
忘れてしまったのだと感じた。
 
モーリス・センダックは、
子供時代の恐怖、怒り、憎しみ、
欲求不満は制御できない
危険な力だと言い、
それを飼い慣らすためにファンタジー
(空想)に向かうのだと言っています。
 
うーん子供時代の
フラストレーションって
忘れちゃいけない気もする。

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