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体感距離

友人が「有名になりたい」と言った。
 
そんな唐突に。と思いながら、
冗談半分でどのくらいかと聞いてみた。
AKBくらい?
 
「ばか!そういうもんじゃなくてだな、
ほら、坂本龍馬のような…」
 
そらたいそうな、と馬鹿にしながら、
ふと気がつく。
坂本龍馬が生きている当時、
彼はどれくらい有名人だったのだろう。
 
友人もよく知らないようで、
今でこそ誰もが知っているほどの
知名度であるが、
そのキッカケはいつだったのだろう、
という話になった。
 

 
調べてみると、
キッカケは新聞であったようだ。
日露戦争の前夜(坂本龍馬没後37年)
天皇の夢枕に坂本龍馬があらわれた。
そして戦いは勝利を収めることになる。
 
その旨が新聞に載って、坂本龍馬の名が
一躍有名になったのだそうだ。
 
有名の度合いを作るのはメディアだ、
ということに今更ながら気がついた。
 
全国紙がない昔、
例えば安土桃山時代かなにかに
北海道の方で、耳を塞ぎたくなるような
残虐な事件が起きたとする。
 
あるいは、琉球の方で、
世にも美しい芸者?が華々しい
デビューを果たしたとする。
 
これはもちろん、北海道では、
美しい女のことを知る由もなく、
琉球では、残虐なことなど無いものに
等しい。
 
いまでこそ、
知らなくても別に良かったんじゃないか、
ということまで、
責任を感じたりなんかする。
その時、世界がしゅっと小さく感じられる。
 
昔の人の体感距離というは、
もっと広かったのではないか、と
想像してしまう。
 
例えば、山の向こう側が
もっと大きいような感じで
見えていたのかなという気がする。

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