体感距離
友人が「有名になりたい」と言った。
そんな唐突に。と思いながら、
冗談半分でどのくらいかと聞いてみた。
AKBくらい?
「ばか!そういうもんじゃなくてだな、
ほら、坂本龍馬のような…」
そらたいそうな、と馬鹿にしながら、
ふと気がつく。
坂本龍馬が生きている当時、
彼はどれくらい有名人だったのだろう。
友人もよく知らないようで、
今でこそ誰もが知っているほどの
知名度であるが、
そのキッカケはいつだったのだろう、
という話になった。
*
調べてみると、
キッカケは新聞であったようだ。
日露戦争の前夜(坂本龍馬没後37年)
天皇の夢枕に坂本龍馬があらわれた。
そして戦いは勝利を収めることになる。
その旨が新聞に載って、坂本龍馬の名が
一躍有名になったのだそうだ。
有名の度合いを作るのはメディアだ、
ということに今更ながら気がついた。
全国紙がない昔、
例えば安土桃山時代かなにかに
北海道の方で、耳を塞ぎたくなるような
残虐な事件が起きたとする。
あるいは、琉球の方で、
世にも美しい芸者?が華々しい
デビューを果たしたとする。
これはもちろん、北海道では、
美しい女のことを知る由もなく、
琉球では、残虐なことなど無いものに
等しい。
いまでこそ、
知らなくても別に良かったんじゃないか、
ということまで、
責任を感じたりなんかする。
その時、世界がしゅっと小さく感じられる。
昔の人の体感距離というは、
もっと広かったのではないか、と
想像してしまう。
例えば、山の向こう側が
もっと大きいような感じで
見えていたのかなという気がする。
2015/02/05