ほんとうにそこにある
ジブリ映画の「耳をすばせば」は
好きな映画のひとつです。
なかでも、しずくがバロンといっしょに
妄想の世界に飛び立つ世界が好きで。
まるで架空の惑星に来たかのような
壮大な風景に圧倒されます。
その背景美術を担当したのが、
井上直久さんという画家さんなのだそうです。
*
彼はイバラードという世界を舞台にして
目を見張るような風景絵画を
いくつも描かれています。
どことなく宮沢賢治のイーハトーブを
想起させたり、
関係ないかもしれないけど、
たくさんの旅行記を書いた
イザベラ・バードの名前のような
ファンタジーの世界旅行と
いったイメージが重なります。
なかでも好きなのは、
こちらの絵。
↑リンク先の絵をごらんください。
海が多層に重なっている
世にもうつくしい現象。
「すべての階層に生命が住み、
それぞれの世界でこの時を過ごしていた」
と井上さんはこの絵に対して書いています。
なにかの暗喩のようでもありますが、
ぼくは、ただただ、この現象を
想像したイメージ力にのみこまれて
うっとりと眺めてしまいます。
*
オイルモーションというのか、
オイルタイマーというのか、
スノードームというのか、
水の中に色のついた油を入れておくと
水の中にもうひとつの水面が
きらきらとさざ波をたてる、
という状況が見れるのですが、
もしも、海水に
「素質の異なるいくつかの種類」が
あって、それが分離して重なる、
という場所があったら
こういう現象が、本当にみれるかも。
と、想像してしまいます。
*
井上さんの多層海は、
実際の海や水での自然現象として難しい。
でも、大気なら…と考えてみると
じつはこういう現象が起きているのかも
しれません。
その証拠として
かなとこ雲があります。
雲が上昇気流とともに
もこもこ膨らんでいくのですが、
あるところまで来ると
それ以上は上に行けなくなるんです。
つまり、大気には見えない天井があると。
それは成層圏と呼ばれて、
下の空気よりも温度に差があって、
そこに層が生まれるのだそうです。
今もぼくたちのずっと上空で
イバラードのような多層の大気が
人知れず存在しているようなのです。
2021/07/30