資源はお金で測っている
歯を磨いている間、
水道をジャーっと
流しっぱなしにすることが
あるんだけど、
そうしていると、
高校の修学旅行の
思い出がふとよみがえる。
*
沖縄旅行。
おもしろかったのが、
ホテルの部屋の班の人選。
サッカー部の人気者と、
無口で、ものすごい個性の
(何考えているか分からない)
持ち主と、
その間に挟まれた自分の3人。
イケメンサッカー部員も、
歯磨きするときに、
水道を流しっぱなしにする。
すると、もう一方の
ひょろっとした無口な彼が、
洗面台にやってきて
蛇口をひねる。
「あ、なんで止めるんだよ」
「水、使っていないから
止めた」
と、のっぽなのに細い声。
「いやいや、
いま使ってるんだし、
出しっぱなしにしても
水道代はかかるわけじゃないし
いいじゃんか」
こう反論するけど、
「お金のこととかじゃなくて、
もったいない。」
結局、口をすすぐ時以外
水は止めることで合意したのだけど、
なぜか、このやり取りだけが、
修学旅行から10年以上も経った
今でもまざまざと思い出せる
体験となった。
*
これと似た経験としては、
マクドナルドの列に
並んでいる時に感じた事がある。
ここに並んでいる人全員が、
自分の好きな注文を、
全部たべられるんだよなあ。
今日だけじゃなくて、
明日もたぶん、明後日も。
お金を払えば、食べられる。
そんなことを思ったとき、
のっぽの彼の声が
頭をよぎる。
「お金のこととかじゃなくて、
もったいない。」
*
食べ物ももちろん
電気も、水道も、ガスも、
自分の実感としては、
お金に余裕があるか、
もったいないと思うか次第。
地球全体の資源の有限さについて
知ってはいても、
実感にまで落とし込むことが
できない。
*
夕暮れの渋谷を歩いていると、
ステーキ屋さんに女子の行列が。
彼女たちにとっては、
ちょっとしたお金を犠牲にした
たまのご褒美的なものだろう。
そんなときに、
屠殺の様子を克明に描いた
写真集を見せて、
彼女たちの食欲を削いでやりたい
という気持ちになる…
でも、その事実を知ったとしても、
人がお肉を頂くことに
変わりはないし、頂くなら、
できるだけおいしく食べたい。
かつて計画停電をして
日本中で節電を意識し始めたが
いつの間にか、
もとに戻っていたように、
仮にお肉の出荷制限を一時的に
かけても、気が付くと
もとに戻るんだろうな。
*
どうしても、
資源をお金で測っていることから、
逃れられない。
お金の価値が、なくなっちゃうような、
大変な事態にならないと、
本来のモノのありがたみは
分からなくなる気がする。
2019/06/24