誰のものでもない
岩波少年文庫のシリーズを好んで読みます。
最近読んでいるのは、
「チポリーノの冒険」。
貧しい玉ねぎ坊やのチポリーノが、
トマト騎士やレモン大公に立ち向かう話。
この話に限らず、
童話を読んで面白いのは、
本の中で作者の意見が語られている、
ということよりも
登場するキャラクターが
本の中でハツラツと生きているように
感じられること。
言葉のなかで、チポリーノという
玉ねぎの子どもが、
活き活きと動き回っている。
作者はジャンニ・ロダーニという
イタリアの人なんだけど、
チポリーノ少年は彼のものではない。
というふうに思えてきてしまう。
ぼくや、これを読んでいるあなたが、
誰かの所有物でないのと同じように、
チポリーノも、独立した自由な
キャラクターだと思えてきてしまう。
作者にも所有されることない、
天然の生き物が本の中でうごめいている。
*
いっぽう身の回りで
よく目に触れるほとんどの言葉は、
誰かに所有されたものばかりだと思う。
facebookもtwitterも、ブログも、
メールも、CMの中のアイドルも、
「わたしが喋っています」というかんじ。
それは誰かのものである。
という味つけがされている。
誰かの意見とか、私が言ったとか、
そういうものを予感させない言葉が
ぼくは好みだなあ、と思うことがおおい。
そういうつもりで、5.7.5を書けたら
面白いと思うし、
こないだ展示した「つみき」の言葉パズルも、
誰の所有でもない偶然の文章だから、
面白いのだろうと思う。
8月の展示でも、
バージョンアップした「つみき」展示します。
2012/06/08