慢性的な疲れには呼吸が必要
おじさんっぽい息のつき方って
ありますよね。
お風呂につかるときの
「ん」と「あ」に「〃」がついたような
ため息とか。
しゃべり始める時に、
口から重たそうに息をすーっとするとか。
手元で作業をしようとするときに、
口を閉じたまま喉のうわべで、
んふ~、ってしたりとか。
…言葉にすると、難しいな。
とにかく、若い人にはなくて、
年を重ねてくると出るあの息遣い。
ぼくも、靴をはくのに、
玄関先でしゃがむと、むふーって息が出る。
あ、年とったなあと悲しくなるのですが…
あれ、大げさにいうと
「呼吸不全」からくるもの、らしいです。
*
最近ブームの三木成夫さんの
「生命とリズム」によると、
慢性の酸欠による”くすぶり”、とのこと。
大抵の慢性的な不調は、
覚醒不全といって、
体の生理的な働きに、なかなか
気が付けないことの積み重ねによって
引き起こされるのだそうです。
*
そして、呼吸は仕事とかなり密接に
関係しているのだそうです。
体を動かす仕事なら、もちろん呼吸との
関係は分かりやすいのですが、
例えば、手元で細かい作業をするときや、
考え事、悩み事、集中、緊張するとき、
ついつい息をするのを忘れてしまう、
のだそうです。
息が詰まる、息を凝らす、息を殺す、
などなど、息についての表現が
いくつもあるように。
肉体の作業であれ、頭脳の作業であれ、
それに真剣に打ち込んでいるような時は、
まず間違いなく呼吸がお留守になっている。
と、三木さんは言ってます。
それこそ、息つく間もない人生。
息がうまくつけないだけで疲れるのだそう。
今日は大して動いていないのに
疲れたなと、思うときは、
仕事と呼吸が両立できていなかった
ということなんですね。
*
職人さんなど、ベテランの方になると
仕事のコツを覚えるときに、
呼吸を会得する、と言ったりするようですが、
なるほど、
かつて単純な労作業には、
(地引網や酒造りや温泉の櫓をかくときとか)
みんなで歌を歌いながら…というのが
ありますが、
あれも呼吸とともに、という意味で
とても理に適っているようです。
呼吸は意識して、ゆっくり、たっぷり
するのがいいんです。
*
そこでぼくは「呼吸は意識」に対して疑問が。
心臓の動きは、意識どうこうじゃなくて、
常にしっかり動いてくれていて、
よほどの病ではなければ、
心臓の鼓動不全なんてない。
心臓も、肺の呼吸も、同じ内臓なのに、
どうして呼吸だけが意識なんだ?と。
*
そんな疑問にも、三木さんは、
答えてくれます。
人の筋肉には、2種類あります。
完全オートメーションした内臓系と、
意識による動きの体壁系の2種類。
心臓は前者。
肺は後者にあたるのそうです。
*
魚のエラは、内臓系で、
つまり人の心臓と同じように、
オートメーションで常にぱくぱく
しているのですが、
もともと進化の過程で、
かつて海から陸へ上がるとき、
魚のエラにあたる部分は、不必要となり、
いまの人間でいう顔の筋肉へと
進化を遂げたのだそうです。
しかたなく、呼吸は、
体壁系からの筋肉を頼るほかなく、
いわば片手間仕事として、
呼吸は半分意識のもとにあるんだそうです。
つづく…
2021/07/22