思い出の思い出
学生の頃、真夜中の倉庫で
冷凍食品の仕分けをするアルバイトを
したことがあった。
倉庫内はとても寒いので
どんどん動いて体をあっためたいのだけど
とにかく「待機」やら「休憩」ばっかりで
すぐに冷えてしまう。
外に出ると空気は生暖かくて、
湿っぽく真夜中に特有の奇妙な風が
ながれている。
電灯の下のベンチや
自動販売機のごみ箱なんかに
寄りかかって、みんなで煙草を吸ったり
腕を組んで目を閉じたりする。
休憩という「待つ労働」を行うのであった。
何人かぼそぼそと話すだけで、
その声も灯りの外の暗やみに
吸い込まれて、しんとする。
とにかくぼうっとしてしまって、
考えが及ばなくなる。
月の下の雲を眺めていたら
なにかが思い出されてきた。
*
小学生の頃のこと。
いつも僕のことをからかう女子のこと。
髪の毛をつんとひっぱって、
それが抜けると「わーい、ハゲだー」
とかいったり
爪をぴかぴかに磨いた、と言って
自慢をするやいなや僕の手をとって
「げーえ、ざらざら!」
といってからからと笑うのであった。
当時は怒るということを
知らなかったのか、
悪口をまともに受けてしまって、
めそめそと泣いていたものでした。
*
多分、あいつはぼくのことを
好きだったにちがいない。と、
そういうどうでも良い考えに至る。
2012/09/04