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思い出の思い出

学生の頃、真夜中の倉庫で
冷凍食品の仕分けをするアルバイトを
したことがあった。
 
倉庫内はとても寒いので
どんどん動いて体をあっためたいのだけど
とにかく「待機」やら「休憩」ばっかりで
すぐに冷えてしまう。
 

 
外に出ると空気は生暖かくて、
湿っぽく真夜中に特有の奇妙な風が
ながれている。
 
電灯の下のベンチや
自動販売機のごみ箱なんかに
寄りかかって、みんなで煙草を吸ったり
腕を組んで目を閉じたりする。
休憩という「待つ労働」を行うのであった。
 
何人かぼそぼそと話すだけで、
その声も灯りの外の暗やみに
吸い込まれて、しんとする。
 
とにかくぼうっとしてしまって、
考えが及ばなくなる。
月の下の雲を眺めていたら
なにかが思い出されてきた。
 

 
小学生の頃のこと。
いつも僕のことをからかう女子のこと。
髪の毛をつんとひっぱって、
それが抜けると「わーい、ハゲだー」
とかいったり
爪をぴかぴかに磨いた、と言って
自慢をするやいなや僕の手をとって
「げーえ、ざらざら!」
といってからからと笑うのであった。
 
当時は怒るということを
知らなかったのか、
悪口をまともに受けてしまって、
めそめそと泣いていたものでした。
 

 
多分、あいつはぼくのことを
好きだったにちがいない。と、
そういうどうでも良い考えに至る。

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