字義通りの天使ちゃん
人助けをするために、
天から舞い降りた天使がいます。
この天使というのが、
とにかく、人の国が初めて。
良く言えば、無垢。
そうではない言い方を選べば、
世慣れしていない、というか。
1を聞いて1を知る。
まっさらで、おろしたて、
そんな子が、
わたしたちの暮らしに入り込んだら、
どうなるのでしょうか?
老天使たちが、
「人がどれだけ無意識のうちに
「空気」を読んでいるか、
自覚するきっかけになる」
と言ったとか、言わないとか。
ともあれ、天使は、
舞い降りた。
そしてお手伝いするおうちに向かう。
*
歩道をあるいていると、
「とまれ」の標識だ。
律儀に止まる。
まわりの人間たちは、
左右をきょろきょろして
大丈夫そうなら、
渡っていくが、
天使は、ずっと止まってる。
それから、しばらくして
「これ、いつまでとまれなの?」
*
やっと目的のおうちに着く。
女性が出てくる。
「あらあら来たわね、待ってたわ。
わたしがママよ。」
中に入って、
こんどは家族を紹介。
「これが、パパで、」
「これが、お姉ちゃんと兄ちゃん」
「うん」と天使はうなずく。
ママは、ちょっと試すつもりで、
自分の顔を指して
「じゃあこれは?」と聞く。
天使「鼻」。
*
お手伝いをするので、
お盆でジュースを運ぶ天使。
ころんで、こぼしてしまう。
ママが、苦笑いしながら
「こうでもしなきゃ、掃除しないんだから、
いいのいいの。」
「そうなんだ」と天使。
ぼくも掃除する、といって、
ジュースをそこらに、こぼしてまわる。
*
回覧板を、となりにまわす、
という指令をうけて、
きっちりとこなす天使。
おとなりさんに
「あらありがとう。
ママによろしく言っておいてね」
と言われ、
おうちに帰り、
夕食の準備をしているママに
「よろしく!」
そういうと、満足げに
部屋にもどっていく。
ママは困って、「…どしたの?」
*
くしゃみしそうな、お兄ちゃん。
天使に「ティッシュもってる?」
「えーとねえ」
とバッグを探す天使。
「あった、ティッシュ、
持ってるよ!ほら!」
そういって、またバッグにしまう。
はくしょん!
「いやそうじゃなくて…」
はなたれながら茫然。
*
おねえちゃんに、
「水、もってきてくれない?」
と頼まれる天使。
水、水、どこにあるかな。
家じゅうを探し回る。
あったあったと、
しとしとの雑巾を持ってきた。
机の上で、
ぎゅーっとしぼって。
「ほら水じゃん」と
どや顔。
お姉ちゃん
「いやー!」
天使(なんか違うみたい…)
*
日常生活で、ことばを使う時、
ことばにしていないことも、
意味に含めて伝えようとすることが
よくあります。
天使のしていることは、
文字通りの意味にしたら、
たしかに間違えではない。
でも、本当はそうじゃない。
本当はそうじゃないことに
「ことばにしないでも伝わるってすごい」
と思うと同時に、
なんで、それで伝わるんだっけ?
とも思う。
変なのは、天使じゃなくて、
じつは、自分の方なんじゃないか?
と、さえ思えてきます。
「言わなくても伝わっている」
ということに、もっと自覚してもいいし、
その現象について、もっと不思議に
思ってもいいのになと思うんですよね。
これ、マンガにしてTwitterに載せようっと。
緊急事態宣言が出たから、
おうちにこもってできることを増やそう。
2020/04/08