友達のできかた
美術大学に行く多数の人は、
美術予備校というところへ通うものです。
ぼくも通っていたのだけど、
ちょっとだけ特殊な場所だなと思った。
なにが、というと、友達のできかたが、
今までと違うという感じがしたんです。
これまでの学校生活だと、シンプルに、
人間関係の中で生まれる自然発生的な
階層の中だけで、
友達として繋がるものです。
目立たない人だったら、そういう
グループだったり、
クラスの中心でにぎやかにやっている
人たちはイケてる人ばかりだし。
*
でも、予備校ではちがった。
その人がどんなに地味な人でも、
作品の仕上がりがいい人は、
それだけ注目を浴びるのである。
こわもての番長みたいな人から、
「きみ、うまいね。なんで?」
みたいに声をかけられたりもする。
女子に無縁の冴えない男子も、
「色使いおしゃれだね」なんて
グレイトな感じの女の子に
言われたりもする。
そう、作品を作るということは、
「外見」や「外面の性格」の見え方に
囚われない、
隠れた潜在能力を見せつけられる
チャンスを作ることなのです。
サッカー部のイケメン男子と、
休み時間に本しか読まない男子が
予備校の帰り道にたのしそうに
話している姿などもよく見かけた。
ごますりや、おべっか、好かれようと
頑張るのではなくて、
すなおに何かを作るというだけの方法が
人から信用される(友達をつくる)
一番いい方法だった。
*
これは、いまでも同じだと思う。
ぼくがもし、ことばあそびもつくらず、
絵もかかずにふつうに暮らしていたら、
リアルに友達3人くらいしかいないかも。
自分が作ったものをみて、とか、
一緒になにかを作るとかして、
関係が広まっている。
ぼくの人間関係の拠り所は作品に他ならない。
それがなかったら、ぜったい友達に
なっていない人ばかりだ。
著名で仰ぎみてしまう人に出会うと、
この人とも友達になれたら、と欲が湧く。
それは、子分みたいになろうとしたり、
おだててみたり、気を遣ってみたり、
嫌われない態度を
取るということではない。
もっといい作品を作らなければ!
と冷や汗をかく気持ちになる。
信頼を得るには、心を動かす作品が
なくてはならない。
生きていて、ほんとにそれが拠り所なのだ、
と思うと、恐ろしくもあり、
わくわくもする。
2015/04/12