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ハルゼミの丘で

早朝が好きです。
いろんなことが大丈夫に
なったような気がする時間帯。
 
人生のエアポケットに転がり込んで、
これまでのいろんなことから
切り離された、という気分になれる。
 

 
朝起きてすぐ出掛けるので、
着替えるとか、顔を洗うとか、
ごはんを食べるとか、
そういうことを一切せずに、
そのままふらっと外にでる。
 
まだ半分夢の中みたいなまま、
夢遊病さながらに扉を開ける。
 
なんというか、パジャマだし
「おばけ」みたいだなと自分で思う。
思うが、なるべく思わないように、
平気な振りをする。
だって、この「ベッド to 外」という
直結感がたまらないんだもん。
 

 
昨日は小雨が降っていたので
新聞紙を持っていった。
途中、お気に入りのベンチに座るためだ。
 
丘陵の雑木林に入り込んで、すこし山道を登る。
2分足らずで「ハルゼミの丘」に着く。
赤松に囲まれた即席の深淵というかんじ。
ベンチに慎重に新聞を敷いて、
しばらくぼーっと座る。
 

 
すると草かげから黒い犬があらわれた。
全速力でこちらに走ってくる。
 
驚く暇もなく、
逃げ腰になりながら立ち上がろうとしたが
あ、新聞紙、新聞紙、とか思っているうちに
犬に捕まってしまった。
 
尻尾をバシバシぼくの脚に当てながら
はぐはぐしてくる。
うおうお、と思っていると、
続いておじさんが歩いてきた。
 
「こんな雨なのに、よく散歩してますね。」
と話しかけられて、一瞬言葉に詰まって
「あ、ほら、早朝のエアポケットが…」
と言おうとしたが、そんなこと言ったら、
本格的におばけだと思われてしまうので、
「い、いやあ朝の散歩は気もち良いですし。」
とどぎまぎして答えた。
 

 
別れてから気がつくと、
おじさんは、しっかり緑の合羽を羽織っていた。
丈夫そうな長靴で一歩一歩泥の坂を登っていく。
 
自分を見下ろすと、半パンにビーサン。
まるで雑木林の中に自分のベッドがあるかの
ような違和感がある。
 
心ばかりが、気持ちいい、と肥大して
実際体がここにある、という意識が無い
ということのはっきりとした現れではないか。
頭でっかちの現代っ子のわたしです。
 
脚がたくさん蚊にさされていました。
 

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