ことばのロボットいろはちゃん 更新2020/8/5

アーサー・ビナードさんに会った話

こないだ、アーサー・ビナードさんの
翻訳について書いたんだけど、
だんだん彼への興味がわいてきた。

漢字とひらがなの使い方のバランスや、
ことばの選び方が、とても無邪気で
かわいらしくて。
人柄(文面柄?)が好きになって
きたみたいです。

平安時代くらいの昔は、
顔を見ないで文面だけで人柄を
想像したというから、
文章だけで人を魅了するって
やっぱりすごいよなあと思う。

SNSで出会って、
一度も会ったことがないのに
付き合っちゃうっていう人たちがいる、
今の時代もすごいけど。

知り合いで世話好きな先輩の
文章作家さんとごはんを食べにいったら
なんの運命か、ちょうどそこに
アーサー・ビナードさんが
いらっしゃった。

こんにちはとあいさつをして
そっと隣に座る。

すこし身をひいて、
背もたれにくっついてアーサーさんの
うしろ姿をながめる。妙に若くみえる。

お店の電球色のあかりのせいか、
耳もとにかかる髪が金色にみえた。

こないだ読んだ「ずっとずっとかぞく」と
「ゴミの日」という詩集がとてもよかった。
と話しかけたら、
想像以上にくだけた笑いかたで、
「はっは、どれがよかったの?」と
聞かれたが、えーっとなんだっけ?
と思い出せなくて、
思い出せなくて…うーん、としたところで
目が覚めた。

あ、夢だったのか。

夢のなかとはいえ、
好きだと思っている理由を具体的に
思い出すことができなかったことへの
反省として、
いまからここに備忘録として
残しておこう。

ずっとずっとかぞく」は、写真家の
ジョエル・サートレイさんが撮った動物たちの
ポートレート(別名フォト・アーク)に
アーサー・ビナードさんが文をつけた写真絵本。

顔に泥を塗りたくるゾウをみて、
「わたしの かおは きれいよ
このながい けしょうふでで
きれいな つちを
ぬるからね ふきつけたりも
するのよ」
という文をつける。

冬に毛が凍るオオカミには
「さむい 日は ひげの
おんどけいが
こおったりも
する」
と。

どうぶつたちは、どれも
うつくしい。
毛並みも、色も、模様も、
まさか自然が作り出したとは
信じがたいくらい緻密で、
ずっと見つめていても飽きないくらい
複雑でいて、ととのっている。

あとがきでアーサー・ビナードさんは
じゃあ、自分はって考えた。

「ぼくとおなじ哺乳類のメンバーは、
みんな毛があるが、ぼくとちがって
だれも散発にいかないし、ひげもそらない。
それでもきれいにととのっているのだ。
もし彼らのマネをして、ぼくが自分の
体毛をすべてそのままに、
体にまかせて自然の状態ですごしたならば、
いったいどんな顔になるのか?」

それを実践したあとの「ひげもじゃ写真」が
同じページにそえてある。
そして、毛の一本一本がちゃんと役割を
わきまえて生えてくるんだ、っていう。

「ぼくらニンゲンは、自然の力をうしなった
わけではないと思う。
たぶん、その力に背を向けて
ずっと無視してしまったので、
もう自分とは関係ないという錯覚に
とらわれているんだろう。」

…自分の中にいる自然の力。

最近、大きな地震がきたけど、
ぼくは玄関からいつでも逃げ出せるように
とびらを半分あけっぱなしながら、
心臓がどきどきしていた。

そんな時にはじめて鼓動に意識がむく。
あ、そうか、ぼくもそうだけど、
「ぼくの体」も備えているんだ、と思う。

もちろん心臓だけじゃなくて、
意識の及んでいないからだの内臓が
ありのままの動物たちのように
血をめぐらせ、
細胞をあらたしくして、
生きよう、生きようと、
動いている。。

そう、感じたんです。

「ゴミの日」という詩集については
次回にもちこし。

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