もつれっ舌
「不思議の国のアリス」の
ルイス・キャロルこと
チャールズ・ラトウィジ・ドジソンは、
どもりがあって困っていたそうな。
教師だったので、教え子の子供たちに
うまくしゃべれていないことを
いたずらに指摘され、
一週間ほどで「もう耐えられない」
などというようなことを
日記に残していたという。
なんというか、大変失礼だけれども
名前からして「ドジ」で「損」みたいな
感じもしてくる。
*
それでもお気に入りの少女たちとの
交友関係の中にはそういう
「ドジ損」的なことはなかったみたい。
むしろ流暢なほど、相手を楽しませて
とりこにしてしまう魅力さえ
あったのだといいます。
そこから不思議の国のアリスの
お話は生まれたのだし、
そのほかパズルやことばあそび、
嘘と本当の境目のわからぬ冗談、
想像力をくすぐるような小話など、
たくさん描かれた。
さらに彼は非常に熱心な努力家で、
教師などの仕事のかたわら
友人の女の子に手紙を書いたり
個人的に数学の研究をしたり
夜も遅くまで起きていたのだそうです。
*
京都の展示場に座っていると、
ありがたいことに見に来ていただいた方と
すこしでもお話する機会に恵まれます。
ただ、作品を作るのにすべて
出し切ってしまった感があるからか
ぼくが言える台詞といえば
「ふが」
とか
「ふがふが」
とかしかないのである。
まともにお話ができずに、
申し訳ない気持ちでいっぱいです。
そんなときに、いいわけまじりに
ドジソンのことを
思い浮かべてしまうのです。
2012/08/12