ぶよぶよ
最近は絵本が、特にモーリス・センダックに
強く惹かれています。
子供向けの絵本というと、
かわいい、平和、やさしい、教育…
こういう日和主義なイメージがある。
センダックは、ぼくの中にあった
このような絵本に対するイメージを
完全に打ち壊してくれた。
知っている範囲で言うと、
「チキンスープライス入り」や、
「アリゲーターズオールアラウンド」
などの無邪気で、ユニークで、
底抜けに明るい一面もあり、
「まよなかのだいどころ」や
「ケニーのまど」のように
不思議で奇妙な世界もあり、
「かいじゅうたちのすむところ」や
「まどのむこうのそのまたむこう」のような
恐ろしい部分もある。
それらに抵抗がなく、むしろ
彼の作品を血肉にしたいと思うほど
魅了された。
どこにそんな魅力があるのだろう。
センダックの絵本は子供は自由で、
楽しくて、幸福な時代だ、とする
考えからは決して生まれないもの
だと思う。
子供時代にある厳しさに
目を向けた所から出発している。
*
子供が自由であることなど、まずない。
(大人ですら自由ではないのだから)
しちゃいけないこと、行けない場所だらけ。
説明のしようのない恐怖感、嫌いなもの、
TVや大人たちの話から伺える
世間の問題へのどうしようもない不安、
そこへ自分の欲望が強く圧しかかり
理性ではとうてい制御できなくなる。
神経系というか、生理的というか、
自分の意図とは無関係にこみあげてくる
感情に、手に負えなくなることが
子供の根本にあるのだと考える。
センダックは、そういう
どうにもならない気持ちを
自分の中で飼いならすために
ファンタジーが必要とされるのだという。
絵本のなかで、
膨れあがった幼児性を解放する。
その表現には濃くどろっとした
甘みが感じられる。
その甘みのぶよぶよしたところに
身をあずけていると楽になる気がする。
あれはなんだろう、
天から「大丈夫です」とお告げが
あったような気分になれる。
*
自分も、作ることに対して
このくらい発散しなければならない。
と思うようになっています。
2012/11/16