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ねこはいだらけ

朝、八時半くらいになると、
窓から太陽の光がさしてくる。
 
すかさず小机を窓際に移動させて、
そこで過ごす。
 
畳3畳分くらいの日なたになって、
この時期としては考えられないくらい
あったかい。
 
体感としては、
日陰の気温は1桁だとして、
日なたは18度くらい。
 
良い日当たりを好むという
観葉植物のねむの木も、
窓際において眺めると
心なしか、こちらもうれしくなる。
 
窓に正面を向いていると、
背中が寒い。
だからたまに背中を向ける。
右を向いていると、左側が寒い。
だからたまに左を向く。
 
こうして、日なたでくるくると
回転しながら、
時間を過ごす。
 
さらに、正午になると、日もやや
斜めになってくる。
 
3畳の日なたが2畳になる。
 
長方形だった日なたは、
直角三角形となり、
小机の敷地も、窓際から、
壁側に追いやられてくる。
 
15時を過ぎると、ほぼ日なたは
なくなってしまう。
 
こうなると、
小机は撤退せざるをえない。
 
いつもの机に座って、
ニューヨーク生まれのあったかい
ひざ掛けをかけ、
電気ストーブを入れ、
ダウンを着て、手先が出てる手袋を
つけても、うすら寒い。
 
仕方なく、こたつに入るが、
こたつは姿勢が悪くなるのと、
こたつにどうしても入りきらない
腰のあたりが恐ろしく冷たくなるので、
立ち上がり、
お相撲さんスタイルのスクワット、
腕立て伏せ、逆立ち、ラジオ体操等の
運動を行う。
 
そして、また机に座り、
電気ストーブをつけ…
と、日なたを失うと、これといった
居場所が定まらず、
うろうろしてしまう。
 
さながら猫のようだな、と思う。
 

 
江戸時代から大正、昭和にかけて、
つまり、ガスコンロではなく、
木をくべたかまどで料理をしていた頃、
一通り用を終えたかまどには、
ぬくもった灰がたまる。
 
当時は薪や炭やわらを燃やすので、
現代にするたき火ように
不純物がほとんどないらしい。
 
そのまま灰を買い取って、
アルカリ性の畑の肥料にする業者が
いたくらい、
灰としての純度が高い。
 
そのぬくもった灰を、
猫は見逃さない。
 
たとえば、日なたがみあたらない
ような日だと、猫は居場所に困る。
 
そこで、あったかい灰を見つけると、
もぞもぞと埋まりにいく。
 
そこも冷めてくると、やがて出てくる。
ぼっさぼっさの灰だらけの猫だ。
 
「うっわ」「こら」「こいつ」
「また入りやがって」
そんな江戸っ子の声が聞こえてきそうだ。
 
そこで、こんなセリフが生まれる。
「男はつらいよ」の寅さんのいう
「けっこう毛だらけ、猫灰だらけ…」
 
事前知識もなくこれを聞くと、
「猫灰だらけ」って、意味不明だし、
なんで灰なの?と思ったけど、
意味が分かると、
当時のあるあるネタとして、
灰だらけの間抜けな猫の様子が
浮かんできて、
俄然面白く思えてくる。
 

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