さまよう窓
パソコンをつけると
ろくなことがない、と思う。
思うけれども、スイッチを入れてしまう。
必要なのだからしょうがない、
とはいえ、実際にするべきことは
それほど多くない。
来る宛もないのにメールチェックを
したがったり、
ネット上でふらふら寄り道をして
しまい、必要のない情報を
がぶ飲みしてしまう。
その結果、ブレが生じ、
居心地のよくない気分になり、
椅子から背がずり落ち、
無気力に陥って
のっぺりと無表情のまま
思考停止状態となる…
ああ!
いますぐクローゼットに入って、
目を閉じながら大好きな絵本、
クラウス&センダックの
「A HOLE IS TO DIG」を
思い浮かべなければ!
そうしてやっと平常心を
取り戻せた気分になれる。
*
本屋で、絵本画家のアトリエを
紹介している本をみつけた。
加古里子や山脇百合子など
そうそうたる名が連なっていた。
気がついたのは彼らの机の上には、
まず、パソコンがない。
膨大な本と紙の山。
ペンや筆、パレットが散乱している。
パソコンのない机の風景は、
集まった本や紙たちが
自らの世界をそのまま創りだして
いるように思えた。
ブレることのない濃密な
空間だと思った。
パソコンなど置いておく必要ないのだ。
とさえ思った。
なにより印象深いのは窓。
ほとんどの作家が
大きな窓をつけていて、
その向こうできもち良さそうに
木々がゆれている。
光が採られている。
パソコンなんかよりも
窓をつけるべきです。
2013/03/01