こどもバー
近年こどもたちは早熟である、
といわれる。
親から与えられるオモチャ、ゲームの
類いでは飽き足らず、
大人さながらの場所を求めて
街へ繰り出すのだという。
ベッドタウンから通じやすい
地方都市などを中心にして
子ども専用の”クラブ”が出来はじめ、
彼らの間では「隠れ家的存在」となり
話題を集めはじめていた。
そこでは、砂糖たっぷりの
ホットミルクのグラスを横に
こんな話が繰り広げられている。
*
「小学校に入ると、
さんすうってのをやるらしい」
「ああ、それならしってる。
ようは、かぞえ方のはなしだろう」
「きみくわしいね。
じゃあ、一つもんだい。
たとえば、このごはん。
スプーンでひとさじすくうと…
これは、さんすうでいうと
どれくらいになるか?」
「うーん、”ご”かな。」
「ご?」
「うん。おとうさんが
“ごはんのごの字もない”って
よく絶叫しているんだ。」
「それは大変。」
「そう。だから
その量なら「ご」くらいは
あるんじゃないだろうか、
とおもったわけ。」
「なるほどね。
じゃあ次のもんだい。
たまごから”めだま”の部分を
とりのぞいたら、
のこるのはどれくらいだ?」
「ふーむ、めだまの部分。
そうねえ。
“たご”かなあ。」
「たご?」
「めだまって真ん中にあるだろう。
そしたら”たまご”の”ま”が
それにあたるとおもうんだ。」
「ああ、だから、”ま”をぬいて
“たご”ってわけか。」
「そう、たまごの白いとこは、
“たご”ともひょうげんできるのさ。」
「さんすうっておくがふかいな。」
…
2013/03/04