おいしい読み応え
おかべりか「よい子への道」シリーズが、
おもしろくて、
「おだんごちゃん」「トイレのてんしちゃん」
「おばけやさん」シリーズなどを
見てみた。
今まで分からなかった
佐藤雅彦氏の言う「トーン」について、
こういうことなのかな、
と実感がわいてきた。
*
自分で本を作っているときは、
これってなんで作ってるんだっけ?
ということを忘れないように、
言語化しようとする。
それが、あんまりいい言い方では
ないけれど、
コンセプトとか、メッセージみたいな
ものとして、意識しておく。
でもね、
おかべさんの本を読んでいると、
「そんなことじゃないんだよね」
と軽妙に諭される気がしてくる。
大体の向上心のある人は、
みんな、深刻さや、まじめさ、
に向かおうとする。
本気でなければならない、と。
みんながみんな、シリアスがいい。
という雰囲気が、ぼくは苦手。
ぼく自身、
そうなる瞬間はあっても、
それが、かっこいいとは思えないし
そういう深刻さは、
案外なにも生み出さない。
*
このおかべりかさんという人は、
大人になってからも、
小学生の心を健全に保っている
という稀有な存在。
大人が、大人っぽいふざけ方、
コミュ力の中で発生する
にせ子ども心、ではなく、
真の小学生、という感じ。
身にまとっているゆるさ、
ときどき個人の妄想が過ぎる
ばかっぽさの肯定感が
いい空気となって本から
にじみ出てくる。
意図じゃないし、
メッセージでもなくて、
居心地をつくっている、
というのがいい。
子どものおかべさんと、
絵が上手で、大人なおかべさん
が共作しているかんじ。
*
具体的に引用してみよう。
*
「これが真相だ!」
1、かいじゅうのリュックのなかみ
かいじゅうは大あばれするので、
にもつはもちやすいように
ちいさくまとめてあります。
このかいじゅうはリュックを
かたにかけないで
せなかのとげにひっかけています。
もちかたをくふうして
いるんですね。
*
こんな感じで、妄想が
どんどん細部にまでわたっていく。
*
リュックのなかみ
「こぜに…スーパーマーケットで
スポーツドリンクをかったときの
おつりです。はかいかつどうは
つかれるので、
とてものどがかわきます」
「はいしゃさんのしんさつけん
…おくばが2本、むしばです。
火をふいたあとに、
ちゃんとはみがきをしなかった
からですね。」
*
楽しい気分が、文章はもちろん、
絵の細部にも、
たっぷりとしみ込んでいる。
だから、読み応えが、
おかしを食べているときみたいに
おいしいなあ、と思える。
2019/06/23