鳥のきもち
ある時、ふと感じたのですが、
鳥の気持ちがよく分かった、
という瞬間があったんです。
いや、鳥じゃなくてもいいんですけど、
人間以外の動物の気持ちというか。
*
たぶん、
自分自身、という認識が
ほとんどないんじゃないかな、と
じゃあなんなんだっていうと、
周りをすごく見ている。
感じ取っているというか。
周りが自分、
自分が周り、というくらい。
*
陽があかるくなったとか、
どこがあつくて、
どこがすずしいとか、
風の強い弱いとか、
ほかの生き物の気配とか、
自分よりも、そちらの方に主体がある
っていうかんじ。
だから、自分がだれかのために
なにかをしなきゃっていう発想もない。
周りを見て、そこに自然と呼応している
というだけだから。
鳥のさえずりが、
朝のさわやかさを醸し出すため
にあるのではなくて、
夜が明けた様子を感じて、
それに反応して鳴いている。
*
自分じゃない周囲の方に
自分があるという、
人間にとっては不思議な感覚。
…でも、人にも本当はあるんじゃないかな。
人それぞれがあまりに、
自分が自分だと思いすぎている気がする。
悩みの代表である「なんのために生きているの?」
なんて、動物は考えないと思うんです。
人でも、たとえば、
なにかにぐっと熱中している人って
そこには自分が消えている気もします。
夢中になって何かをしている人は
それが何であれ「なんのために生きているの?」
という考える隙もない。
*
自分じゃないものに、
耳をすまして、想像をめぐらしてみることは
気持ちにも、健康にも、
自分自身の本来の素朴なあじわいが
感じられるキッカケになるんだろうな。
2021/08/02