虫からみると?
人の主観って、なかなか払拭できない。
「土は汚い」と思う。
というのも、そう。
一方で、なかには土から栄養を
とる生き物がいる。
カタツムリは、コンクリートも
食べるらしいし、
ウシカエルなんかは、
泥まみれの芋虫もごちそうだって。
あと、みんなの嫌いなゴキブリも食べる。
カエルには歯がないので、
パクッと口に入れて、
当然生きたままごっくんする。
お腹の辺りをこにょこにょさせて
溶かしていく。
うへー、そんなの食べて、
気持ち悪いよ。と思う。
おおきいカマキリを食べる時は、
一度に入りきらないので、
足が口からはみ出た状態で、
お腹の中のスペースを
都合しながら、徐々に飲み込んでいく。
その足が出た状態って、
なに?怖くないの?って思っちゃうけど。
*
道なき道の先にある、
荒れたままの泥沼をみると、
こりゃひどい、と思うけど、
かえってそういう
人の手が入らないところの方が、
カエルにとっては健康的で
棲みやすい。
絵本なんかでも、動物の擬人化がある。
「がまくんとかえるくん」シリーズも
綺麗な家に、箱庭的な整った環境に
住んでいるように思えるけど、
あれは、結局のところ、
擬人化の部分を楽しんでいるのであって、
カエルの観察とは違うよなあ。
虫からみた感覚を想像すると、
どうも、人の生理的感覚とは
違うらしいぞ。
*
夜、歯を磨いていると、
洗面所にムカデのちいさいのが、
現れる。
「おっ!」とびっくりして
おまえはどこから入ってきたんだ、
と思ったとたん、
こちらに気が付いたのか、
ちょろちょろっと、壁のすきまに
潜っていく。
そんなところに隙間が、あったのかよ
という絶望的な気分で、
その裏側を想像すると、ぞっとする。
基本的に人が、汚いと思うところの方が、
棲みやすい生き物もいる。
「汚い」と思うのは、仕方がないけど、
人の思う汚さが、生物全部に
当てはまるわけじゃない。
そういう虫たちもいる、と思うと、
人が整備しすぎない場所を、
ところどころに残しておいても
いいのではという気持ちにもなる。
(正直を言うと自分の生活圏からは、
距離をおきたいと思うけれど。。)
*
虫の主観にちょっとだけ近い人もいる。
「マルセルの夏」という映画で
田舎の少年が、
きれいなドレスを着た女の子と
握手をしようとして、
土まみれの手を差し出すと、
女の子は「きたない」という。
マルセル少年は、
「これは土だから、きたなくないよ」
という。
こういうセリフにもハッとさせられる。
田舎の生活で、
いろんな生き物に寄り添っていると、
虫の「したいこと」が分かるのかもしれない。
人間が一種類でこの世界を回しています、
みたいな感覚ではないんだろうな。
人が知覚出来ていないだろう、感覚を
想像するだけで、
見え方も解釈も変わる気がする。
2020/04/14