奥ゆかしき折句
ことば遊びの種類に、
折句(おりく)というものがあります。
英語でいうところのアクロスティック。
もっと分かり易く言うと
小学校の頃にやった
「あいうえお作文」のことです。
「に」こにこ
「し」ながら
「む」りをしないで
「ら」くしたい
というふうに、こんな
怠けものが書いたような作文に
自分の名前をあてはめてみる。
みたいなものが折句です。
古くは平安時代から、和歌に折句が
取り入れられていたそうです。
たとえばこんなもの。
「か」ら衣
「き」つつ馴れにし
「つ」ましあれば はる
「ば」る来ぬる
「た」びをしぞ思ふ
意味はよく分からないとしても、
こんなふうに、和歌に
「かきつばた」という言葉が
込められているのが分かります。
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こないだのブックフェアで販売していた
「補集合の本」や
「光のメッセージカード」も
この折句という技法を使って
作ったものです。
自分で作っている時には、
これはあたらしい表現だ、と
思ったりもしたのですが、
実は平安時代から脈々と続く、
伝統的な日本語の技法だったのでした。
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千年以上も昔は、
直に気持ちを書いて伝えることは
あまり奥ゆかしくない、と
思われていたのかもしれません。
和歌に本音の気持ちを
そっと隠して、暗号のように
意中の人とやりとりしたそうです。
折句にしたためたメッセージが
折句になって返ってくる。
そういう繊細なところが、
日本的なのだというと、
なんだか分かるような気が
しないでもない。
twitterやfacebookにも
こういう奥ゆかしさがあったら
どうかなあ。いやないかなあ。
2013/09/27