きせかえタイトル
詩って、いろんな種類があるし
読んでいて、分かるーと思うのもあれば、
まったく理解不能というのもある。
一口に説明はできないけれど、
ひとつ言えるのは
「ふつうの文章とは違う気がする」
ということ。
普段使いの文章と、詩の違いって、
なんだろう。
その答えをあえて、分からないままにして
以下のいくつかの文章を見てもらいたい。
「」はタイトル
その下につくのが、その文章。
*
まずは、これ。
「宛先不明の手紙」
二つ折の恋文が番地を探して
さまよっている。
という短い作文があったとする。
これはふつうの文章。
ふつうの文章ってなんだって思ったら、
たとえば、郵便局にいって、
局員さんに、
「二つ折の恋文が~」
とうっかり口を滑らせても、
「いや、つまり、宛先不明の手紙をね、
探しているんです」
と言えば、なんとなか通じる表現のこと。
でも、もしこれを詩のようにするなら、
こうなる。
「蝶々」
二つ折の恋文が番地を探して
さまよっている。
タイトルを変えると
詩という感じが出る。
(でも、局員さんに
「恋文が蝶々で~」と言っても
やばい奴以外のなんでもない。)
*
脳内には細い回路が巡らされている
というけれど、
詩をよむと、なにかの電気信号が
花火のような形でパッと回路を
通りぬけていくような印象がある。
理論的には成立していないようだけど
イメージは掴める。というような。
他にも例を挙げてみよう。
「祖母」
いつも怒っている老女
これは、ふつうの文。
タイトルと文に齟齬はない。
しかし、これを
「とうがらし」
いつも怒っている老女。
とすると、とうがらしが
そういうキャラクターに
思えてくる。
気が付かなかったけれど、
言われてみれば、分かるなー。
という意外性が、
詩にはあるのかもしれない。
*
続けていくつか並べてみよう。
まずは、ふつうの文章。
1.「ボディビルダー」
えいやっと、ところどころに力こぶ。
2.「クリスマスツリー」
あ、あそこに星のかたちを見つけた。
3.「コンビニ」
行き当たりばったりでみつけた。
4.「毛糸のセーター」
丸洗いしたら、こんなに小さかった。
5.「楽隊」
谷間から笛をならしてやってくる
6.「忍者の術」
敵に後ろ姿を見せながらにして勝つ方法
7.「ごきぶり」
でどころのはっきりしないもの
8.「配達指定便」
昼間は遠くまで届くが、夜は届かない
*
これのタイトルを代えると、
果たして、詩のように
イメージが広がるか。
試してみよう。
1.「いもむし」
えいやっと、ところどころに力こぶ。
2.「こもれび」
あ、あそこに星のかたちを見つけた。
3.「夏の水平線」
行き当たりばったりでみつけた。
4.「毛ムクの犬」
丸洗いしたら、こんなに小さかった。
5.「おなら」
谷間から笛をならしてやってくる
6.「かけっこ」
敵に後ろ姿を見せながらにして勝つ方法
7.「春の湧水」
でどころのはっきりしないもの
8.「視線」
昼間は遠くまで届くが、夜は届かない
*
参照は、
ルナール「博物誌」。
「シリーズ世界のなぞなぞ」より
「黒、白、赤のなぞなぞ」 。
句集「夜のぶらんこ」土肥あき子。
「きせかえタイトル」
という名前でこれも形にしたい。
2018/03/30