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古代文字が読めないあなたに

いまこの作文を読んでいるあなたには、
古代の象形文字が読めるでしょうか?

読める方に、続きを読むことを
おすすめしないんだけど、
きっと読めないだろうから
話を続けます。

あなたがくつろいでいるとき
時間を自由に行き来できる謎の生命体が
いきなり現れ、あなたを囲み、
古代文字を見せる。

「これを読めるか?」と尋ねる。
その衝撃的なきもちをどうにか
飲み込むことにしても、もちろん
文字は読めない。
「a」については「なにかの鳥だ」と
こたえる。

すると謎の生命体らは、
けたけた笑う。
「たしかにそうだな、そうもみえる」
「けれど、こたえは”a”だ」

読めない我々は、腑に落ちない。
「どうみても鳥じゃないか!
あんたらが勝手にそうきめたルールを
こっちに押し付けるな!」

「悪かった悪かった」と謎の生命体は
目の辺りを三日月のようにして笑う。

「きみの名前をおしえてくれないか」
「ゆうき」と答えると、
「それなら、きみは”Y”、
つまりこの2本の葦の穂が
知恵と行動を象徴する。
君のための文字だ。」

すると、分からないはずの
ヒエログリフが、急に
身近なものに感じ始めてきた。

古代の石板をならべてみると、
あ、ここにもぼくの文字だ!
ここにもあった!

知識をもたない者にとっては、
文字をただ「直感的」に
受け止めるよりほかない。

でも文字として使う以上、
直感的なとらえ方だけではなくて、
文字として、意味として、シーンの
想起をするきっかけになってこそ、
である。

「意味」と、それを象徴する「記号」とが
どうやって結びついていくか、
どうしたら、そこをたのしめるか。
とても関心があります。

調布の発達支援事業所で、
定期的に子どもたちと、ことばを
使った遊びのクラスをもたせて
頂いているのですが、
年少さんから、年長さんまで
はばひろい。

文字が読める子もいれば
読めない子もいるんです。

読めない子がどのように
文字を見ているかが、
すごく大事な視点なんです。
ぼくにとって。

読めない子でも文字を
直感的に伝わるといいなと思い、
電気がついたような、明るい
「ぱ」を以下のように作って
見てもらったところ、

「ドーナツ!」という声が上がった!
これはまさにヒエログリフの”a”を
鳥だ!というのと同じであって、
ポンデリング的なものに見えたのかも
しれない…!

こんどはこちら、
同じ「おはよう」でも、
いろんなニュアンスで伝えると
また伝わり方が変わっておもしろい!
というつもりで作ったもの。

ちいさくて丸くて軽そうなのと、
大きくてギザギザで重そうなのと、
大人ならたとえば
上が、ひよこのおはよう、で
下が、恐竜のおはよう!
みたいに思う。

でも、こんな子がいた
上が緑だから恐竜で、
下のギザギザが生まれたての
たまごのカラみたいだからひよこ、と。

色を注視した関連性、
効果線に注視した関連性。

そこをみたのか…!!と。

たしかに要素を多くしすぎて、
その文字のどこを手掛かりにしたらいいか、
自由度が高かったのかもしれない。

そもそも「この文字はこう」と
一対一対応にした時点で、
答えがきまってしまうが、
(言葉は共有するものであるから、
ある程度正解はあるんだけど)
むしろ、たくさんの手がかりを
もたせることでいろんなとらえ方が
できるのが、
むしろ良かったのかもしれない。

文字と縁の遠かった子が、
おもしろがるきっかけになったり、
意味が伝わる、表現できる
さいしょの一歩になってくれたら、
と願ってやまない。

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