worksは8/24に更新しました.

空気の水底で

とうとつだけど、ロケットの話をしよう。
 
たとえば映画でロケットが帰還する場面。
それは大体、緊迫感のあるシーンになる。
 
機体はガタガタうなり、アラームが響く。
それから飛行士たちの額には汗が光る。
「大気圏突入」である。
 
今まで平然と高速で移動してた宇宙船が、
なぜ地球に落ちていくだけのことに
それほど苦労するのか。
 
「それは地球のまわりに、
空気がたまっているから」
だという。
 
…とは分かっていても、どうも
実感にそぐわない。
 
だって、普段生活していて、
空気を意識することなんて
まずない。
 
意識しないものが、大きな力を
もっているとは、なかなか信じ難い。
(でも実際のところ、
空中に手のひらを差し出しせば
その上に1トンもの空気を持っている
ことになるという…信じられないけど。)
 

 
話はがらりと変わる。
 
深夜あまりにもけだるかったから
少し体でも動かそうと思って、
近所の公園まで歩いて行った。
 
涼しくて、心地よく池のまわりを
めぐっていくと、
池を眺望できるポイントに出たので
そこのベンチに座った。
 
砂利石がたくさん転がっている。
「久しぶりに、」
と思って水切りをやってみた。
 
水の上を石をぽんぽん跳ねさせるやつ。
 
…そうそう、それをやっているときに
思い出したの、「大気圏突入」のこと。
 
早いスピードで水に飛び込んで行くと
激しいしぶきがあがる。
角度によっては石を弾き返すくらい
水が硬いものに変わる。
プールで腹から飛び込んでしまうと、
なかなか痛くもあるし。
 
そう、宇宙船も激しく(水のような)
空気にばしゃーんと飛び込んでいくような
ものなんだ。
原理は同じなんじゃないかと思った。
 

 
水と、空気は似たようなもの。
と思ってみると、想像がふくらむ。
 
人が「空気なんか気にしない」ように、
魚たちも「水?なにそれ?」と
思っているかもしれない、とか。
 
それから変なたとえだけど、
魚が、水揚げされるのって、
人間が裸で宇宙空間に連れて来られるのと
似ているのかもしれない。
 
そして、街を何気なく歩いているときは、
魚が水の流れの中でそよいでいるように
ぼくたちも深い空気の底に沈んでいて、
魚さながら、
いわば空気の中を遊泳し、旋回しているのだ
と思えてくる。

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