worksは8/24に更新しました.

夜な夜な天使は舞い降りる

「誰にも読まれない物語」というフレーズが
とつぜん浮かんできました。
 
これはどういうことだろう。
たぶん、売れない小説という意味ではない。
なんというか、
大袈裟な言い方をすれば
それぞれの人生のこと、なのでは、
と思い当たりました。
 

 
自分の過ごしてきた8割くらいは、
他言しないかぎり、他の人には知られない。
 
もちろん現場をともにした人がいれば
共有できるけれど、
24時間×7日間、ずっと同じ場所にいる
なんて人はほとんどない。
 
どこかに「あなた」のいない時間が
必ずある。
 
「いない時間」を知るためには、
当人に会って、
いまどんなことを考えているか、
どんな気持ちでいるかを話したり、
接したりしてみないと
分かりようもないことです。
 
だからこそ、ツイッターとか、
ラインみたいなものが、お互いの
知らない時間をつなぎ止める
便利なツールなのだと思います。
 
とはいえ、「言いたいこと」と
「言いたくないこと」があるとすれば、
基本は「言いたいこと」を中心に
投げ合うのがSNSのような気もします。
 
隠しておきたい事、
言うべきではないことが
表立つ事は少ない。
 
いま自分がここでこうしている事は、
他の人は知らないだろう、
ということが集積してくると
なんだか、まいってしまう。
 
わざわざ言う事でもないし
言いたくない事だけれど、
知っていてくれる人がいれば
助かるのにな、ということがあります。
 

 
そんなときに
「夜な夜な天使は舞い降りる」という
チェコの作家の本を見つけました。
 
ずっと「ある人」のそばにくっついて
見守っている守護天使たちが、
なんだか疲れた様子で、教区司祭の
ミサ用のワインを失敬しながら
彼らの主について語り合う、という話。
 
護られている当人には、ふだん
天使の存在は見えていない。
 
けれども、熱心になったり、愚痴ったり、
喜び合ったり、うんざりなどしながら、
天使たちはじっと主を見つめている。
 
なかなかお目見えすることはないけど、
ずっと自分のぜんぶを
眺めてくれている人がいる、
と思うと、なんだか気が楽になります。
 

« »

サイト管理