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隠れる。

トーベ・ヤンソンの短編集
「クララからの手紙」を読んでいます。

「夏について」
という一篇がとてもいいんです。

夕陽が沈もうとしているとき、
浜辺にぼろぼろの樽を見つけ、
それをまっすぐたてて、
もぐりこむ。というシーンがあります。

嵐のあとで、
水位が大分あがってきて、
野原もみずびたし。

水のなかの草を踏んで歩くと
気持ちよさそう。

たぶん、樽は底が抜けていて、
水が、草ごと浸水している。

天井は蓋がしてあると思われ、
ちょうどいい穴から
太陽が焔のように赤く、内側を
染めている。

だんだん暖かくなる水温。
樽の中で腰をおろして、
「だれもわたしがここにいると知らない。」

…と、思んです。

こういうふうに
周りから隠れてみるのって
ぼくも非常に好きで。

ときどき、
押入れにもぐって、
ぼーっとすると、いい心地がします。

なんだろう。
暗くて、ほどよく狭いところにいると
自分に意識が戻ってくる、
という感触があるんです。

これ、分かる人いるかなあ。

あ、いま、自分がここにいる
っていうかんじ。

瞑想する、とか
座禅みたいな感覚と似ていると
思うんだけれど。

なにか、煮詰まったときとか、
うまくまとまらず、
もやもやしたときに
よく隠れます。

なにから隠れているのか、
と言われるとね、うーん、

「周りとつながっている」という
感覚から隠れるという感じ。

とりあえず、周りは無視して、
自分はどう思うんだ?

としずかに一人会議をして
こころを穏やかにするというような。

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