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語感を楽しむ

本を読むのが好きなひとは、
悩み事が多い、と言っても
過言ではないと思う。

読んで気持ちが解消される、
という浄化作用みたいなものが、
読書にはあるから。

ぼくが本を読むことに対して
積極的になったのも
そのせいなんだけど、
読んでいると、そのうち
別のところがおもしろいな
と思うようになってきた。

分かりやすい例でいうと、
山村暮鳥という明治生まれの詩人が
書いたこの詩。(抜粋)

窃盗金魚
強盗ラッパ
賭博ねこ
殺人ちゅりっぷ
誘拐かすてえら

…意味じゃなくて、
言葉のイメージの感触を
組み合わせて作ったもので、

語感や、字面としてのイメージ、
目で読むのにきもちよさとか、
おもしろさがある。

原田郁子の歌で
いしいしんじが作詞の「海からの風」
という曲があって、
この歌詞がまたいいんです。

外国の旗
新聞紙
小魚のむれ
空き缶

派手なシーツ
三輪車
バーの看板
おばあさん

これも、意味のある文章ではなくて、
単語の羅列なんだけど、
おもちゃや人形であそんでいるような
くすぐられるような
愉しさがある。

語感が気持ちいいといえば、
「まぼろしの白馬」(石井桃子訳)

食べ物の描き方が
おいしそう。

熱いオニオン・スープ、
肉のシチューに焼きりんご、
自家製の皮のかたいパン、
あたためられたぶどう酒
マリーゴールド色のバターに
焼きたてのクリ。
 
ピンクのさとうごろものかかった
かわいらしいケーキ、
あわだっているしぼりたての牛乳、
銀のおさらいっぱいのサクランボの
さとうづけ。。

これを読んでいる時、
なんとなく口の中に本当に
味を感じていた記憶が
いまでも蘇る。

このホームページを作った当時、
ぼくは、語感であそぶ575を
作っていたんだけど、
抜粋してみよう。

冷淡なピアノをはじく夏の朝

はなうたでバターはとける洋梨酒

封筒のなかでかすかな虫の音

初蝶やバターの匂い光りだす

よろこべばオムレツふたつ熱すぎて

ほっぺたも牛乳瓶も雪景色

意味なんて、ひとまず
どうでもいいじゃないか、
と思ってから初めてできる遊び。

だれにも共有できない一人遊び。
だけど、分かってくれる人がいたら
とてもうれしい。

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