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記憶の作業台

トップイメージをそろそろ更新しようと
思ってずっと前からぼんやりと
頭の中で練っているのだけど、
なかなか着地しない。
 
すがる気持ちで
「文章を理解するとは」(甲田直美著)
をぱらぱらめくっていると、
もともと考えていたこととは
違うことを面白がってしまった。
 
ブリッジ犬157
 
脳には長期記憶と短期記憶がある。
これはなんとなく聞いたことがある。
一般的に言う「記憶」というと、
思い出とか経験って連想するけど、
これは長期記憶。
長年染み付いた習慣も、これ。
 
一方、短期記憶というのは、
初めてかける電話番号とか、
読んだ本の細かな内容とか、
試験勉強の一夜漬けとか、
その場で必要な一時的な記憶。
しばらくすると忘れてしまう。
 

 
この本では、「短期記憶」は
文章を読む時にも
使われているのだという。
ついさっき出てきた事柄や場面を
心に留めながら読み進めるものとして。
 
(…「この本では」と言った時、
ああ、あの本ね、と思えるのは
短期記憶を使っていると思われる。)
 
面白いのは、短期記憶の別名。
「作動記憶」というのだそう。
一種の記憶の作業台だという。
 
頭の中に作業台があって、そこに
記憶(言葉)が並べられるところを
想像する。
 
ああ、これは575の句のようだな。
 
たっぷりと濡れ苔の花たちあがる
(土肥あき子)
 
恋文をみせあふ少女百日紅(さるすべり)
(川上弘美)
 
カナリアの黄が溶けている春の家
(坪内稔典)
 
8の字に玩具の汽車が花散らす
(市川無畏)
 
机の上に素材をならべて、
香水の調合のようにかけ合わせる。
短期記憶による感覚の操作こそが、
ぼくの好きな575なんですね。

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