腑に落とすのは詩かも
この作文、ちょっと気を抜くと、
書かな癖がついてしまうので、
短くてもいいので、なんか、書こう。
断片的に。
*
電車の席に座っていると
マスクをしていても、匂いが
入り込んでくる。
隣の人がジュースを飲んだ時に
甘くて温い匂いがこちらの鼻に
浸ってくる。
どっとペンキをこぼして、
辺りがさーっと染みていくような
イメージが、
匂いにはあるのかもしれない。
匂うっていうのは、
じっさい「そのもの」が、鼻から
入っているという事らしいけど、
いまいち実感がわかない。
もしも、匂いが病原菌だったら、
感染しているんだし、
トイレで「うっ」っと思った時には、
「そのもの」がすでに、鼻の中に
入り込んでいるということなんだと。
空気は見えないところで、
結構なスピードで拡散している。
と言われても、
実際見たことないんだから、
なんか、釈然としない。
(全然関係ないけど、
ちなみに、糞便匂のもとである「インドール」
という物質を低濃度にすると、
なんと花の匂いになるんだって)
*
もっと釈然としないのが気圧。
1気圧(1013hPa)で、1平方メートルあたり
10トンの重さがかかっているらしい。
気になったので気圧計を手に入れて、
眺める。
散歩するときも、持ち歩いて、
しばらく歩いては、気圧の数字を
ながめ、また歩く。
結果的によくわからない。
そもそも、
実際負荷がかかっているっていうのに、
屈伸しても、腕を上げてみても、
10トンらしい重さは感じられないし、
天気の崩れやすい今の時期は、
大体3~4hPaの揺れ動きがある。
ということは、
体にかかる重さも大体3~40キロくらい
変動していることになるけど、
はっきりとは感じない。
頭痛がしたり、体がだるくなったり、
間接的に感じることはあっても、
う、いま重くなった、とは感じない。
無意識のうちに、そうなっている。
*
片時も忘れずに
呼吸をしているのに、空気のことは
はっきりとはよくわからない。
風が起きた時にしか、
空気は無いように思える。
でも、じつはものすごい力が
蠢いているはずなのに、
なかなか決定的な実感に紐づかない。
多分、理屈の部分を調べても、
分からないだろうな。
*
一方で、まどみちおが
重力に引っ張られた(床におっこちた)
ちいさなビーズについて、
こんな詩を書いている。(部分抜粋)
「いわれた とおりの 道を
ちゃんと かけて
いわれた とおりの ところへ
ちゃんと 来ました
と いうように
いま あんしんした 顔で
光って いる
ああ こんなに 小さな
ちびちゃんを
ここまで 走らせた
地球の 用事は
なんだったんだろう」
これを見て、
とても腑に落ちたような気分になった。
重力って、地球の用事だったのかと。
「だからなに?」と思うかもだけど、
自分自身が、重力についての
実感イメージをつかめた感じがする。
そう思うと、
どんなものかは、まだ分からないけど、
きっと理解の手助けになるような
詩のような言葉が、
どこかにあるはずだと思って探している。
なかなか見つからないまま、
ふらふら散歩から帰ってくるんだけど。
2020/07/29