相手を読む方法
よく「自分のことばを大切にせよ」
と言われる。
それって「人に自分を伝えよう」
という文脈で言われたりする。
でもね、ぼくは
「自分のことば」=「腑に落ちる」
と思っている。
結果人に伝わったとしても、
人に伝えることを前提としていなくて、
自分自身に一番しっくりと伝わること
(「自分自身に伝わる」ってヘンだな)
なんじゃないかと思う。
発信者中心的な。言い換えると、
自己中によって生まれることば。
「おれがこう思うんだから、
こうなんだ。」と、その人が
本当にそう思っているなら、
誰にも否定はできないもん。
だから、自分のことばとは、
「自分のことを相手に
説明できることば」というと、
ちょっと的が違うんじゃないと思う。
*
「相手」を意識するなら、もっと
面白いコミュニケーション方法がある
「ことばにしなくても伝わる」
って事を積極的に受信すること。
たとえばさ、
占いしてもらいに来た人に、
「あら~」としみじみとした顔で、
「うんうん、わかるわ。
なにも言わなくていいの。
あなた大分悩んだのね。でも大丈夫よ。」
こう言えば大抵の人は、
つい「心を読まれた」
という気がしてしまう。
勘のいい人ならすぐに分かると思うけど、
占いに来る時点で悩みがあるのは
当然なんだし、
どう考えたって、励まして欲しいに
違いない。
占い師にしたら、それこそ
「なにも言われなくてもわかる」
なのですね。
*
もっと簡単なのでいうと、
これも、
「何も言わなくてもいいの、
私にはわかるわ、あなた…」という方式で
占い師のようにもったいぶって、
「髪切ったのね?」
どことなくそれっぽくなるでしょう。
冗談だけど、
これも「言われなくても伝わる」。
*
他にも整体の人に、
職業を当てられるということも
あったりするようだ。
以下、
Twitterからの引用。
きょう初めて行ったマッサージ屋の
お姉さんに
「ひょっとして翻訳の仕事とかしてます?」
と言われ、
「なぜわかったの?」と訊いたら、
「背骨と腰骨がこういう歪み方をしてるのは、
パソコンの左側に本か何か置いて
仕事してるんじゃないかと思ったんです」
だと。
*
人(人に限らないけど)は
ことばを発さずとも、
ことば的なコードを常にまとっている。
それは、発信者中心ではなく、
受信者による積極的な
コミュニケーションと言える。
「他人から見た自分のことば」
というか
「私からみたあなたのことば」
というか。
*
こういう話にもってこいなのが、
シャーロック・ホームズ。
ワトスンと初めて会った時、
彼はワトスンがアフガニスタン帰りの
軍医だということを、
一言もしゃべる前から言い当てた。
その詳細はこちらからどうぞ。
一口にことばというけれど、
文字や、発声のことばだけが、
ことばとしての機能を持つのではない、
という気がしてくる。
受信者次第では、なんの変哲もない
ことが、記号的に、メッセージとして
受け取れる可能性を持っている。
こういうのって、
「自分のことば」と対照的なテーマ
(他人からみた私のことば)のように
思えてきて、面白いなと思うし、
読まれてみたい、と思うと同時に
読んでみたいとも思う。
こっそり実践してみよう。
2019/06/13