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消えない笑顔

夕方の駅の改札を出ると
一人で、にこにこしている人を
見かけた。
 
一人で笑ってんのかな、と思って
よく見ると、
改札の向こう側にも、
にこにこしている人がいる。
 
あ、これは別れ際のにこにこだ。
と思って納得。
 
「じゃあねー」と言って
別の方向に歩きだしたけど、
すぐには、笑顔は消えず、
一人になっても、しばらく
うっすら笑っている
という短い時間がある。
 
誰かのを目撃するのも、
自分がそうなるのも、
あれは、なんともいえない
良い感じがする。
 

 
近所のちいさい公園の横を
歩いてると、
「いーち、にー、さーん…」
という声が聞こえてきた。
 
声の方を見ると、
公園の中心にある電灯の柱の下で
目を閉じて、数をかぞえている。
 
あ、これはどうみても
かくれんぼだ。
周りをみると、もう人影は
見えない。
 
どこに隠れたんだろう。
関係ないのに、ぼくも公園の外周を
歩きながら探してみる。
 
んー、いないぞ。いい隠れ手だ。
本格的でいいぞ。と思う。
 
「はーち、きゅーう、じゅう」
 
で、声が途絶え、
公園は一瞬、鳥の声だけになる。
 
目を向けると、鬼は、
ちょうど顔を上げるところだった。
 
鬼である女の子は、
「あ、いない」という少し茫然とした
表情をしたあとに、
にやっとした顔になる。
 
さっきまで、目の前にいた友達が
どこかに消えちゃった。
という…、
あの笑いを分析するのは
難しいけど、
つい笑っちゃうのはよくわかる。
 
ぼくが外周の道沿いに、
公園をぐるっと回ると、
生垣の裏に隠れてる
女の子2人をみつけた。
 
背を丸めて、声をひそめて
くすくす笑っている。
 
鬼はそれに気が付かず、
にやにやしながら
あたりを見渡している。
「どこーだー」
 

 
目の前にいなくても
消えない笑顔っていいよなあ。

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