掃除はつづくよ
ここ一か月くらい上手に余裕がつくれず、
いろいろさぼっていた。
この作文も書きたいのにやらないでいた。
やらないでいた、といえば、
部屋の掃除もだいぶ怠っていた。
そこで落ち着いた日の夜に、
ちょっとほこりだけでも払おうと
ほうきではいて、部屋中をうろうろする。
すると今まで見えていなかった、端っこや
本棚の裏、ソファの下、トイレの床、
たこ足コンセントの下にほこりがこんもり
溜まっているのを目撃してしまう。
うわあ、これは、と思って、とる。
ティシュを濡らして軽くなでると
ほこりの塊はごそっととれる。
取り除くときれいになって、
あら、すてきと思う。
そうして、あっちこっちの隅々を巡っていくと、
そこそこ夜も更けて、
しかし、気持ちは軽くなる。
*
翌日、目が覚めると、朝日に照らされた床に
無数の細かいほこりがまたのさばっている。
ほうきでかき集めて、塵取りにのせると、
まだこんなにあったのか、と驚愕する。
昨日あんなに掃除したのに。どうなってるんだ。
*
いやまさかこれはドッキリじゃないか。
ぼくが寝ているときに、玄関の前でレポーターが、
ちょうど今朝取れた分だけのほこりを
忍ばせて、カメラの前でこういっている。
「おはようございます。いま、朝の4時30分です!」
もちろん小声。
「今回は、これ」といってほこりの入ったビンを取り出す。
ワイプに映る芸能人たちがきゃー、わー、とおののく。
「このほこりを、ふるいをつかってまいていきましょう」
「さ、スタッフさん、」
なぜかぼくの家の鍵を持っているスタッフが現れる。
「しずかに、しずかに!」興奮するレポーター。
…
朝、部屋に10か所も設置された
隠しカメラによって
起き抜けの自分が映される。
「はあ、なんでだよ」
寝癖が付いたまま信じられない様子で
床を確認して指でこすってみる。
舌打ちする自分。
そして、どっとウケるスタジオ。
「いたずらだって気付いてない気付いてない!」
別室でモニター映像を見ているレポーター。
徹夜とは思えないテンションの高さ。
しかたなく引き戸をあけてほうきを取り出す。
「あー!また掃いてる!掃いてますよ!
ま、じ、め、だ、なー。」
これで茶の間も大爆笑のはずだ。
*
しかし、現実はこうだ。
朝日の当たるところならわかるが、
ほうきで掃くと、大量のほこりの微粒子が
舞い上がる。塵取りで取れるのは
せいぜい70パーセントくらいがいいところ。
あとの30パーセントは空気中にしばらく滞在し、
寝ている間にしずしずと沈殿する。
そこで、出るほこりなのであった。
掃除とは終わらない。
掃除をしても、掃除をしても、
掃除はつづくのである。
2016/10/06