意外な道しるべ
直線って、2つの点があれば
成り立つ、という。
大きい白い紙に、
長い線を引いたり
紙を切ったりするときも、
2点を決めて定規を置けばいい。
それが、自分が持っている
60センチ定規に収まる長さなら
2点を定めればキレイに切れる。
だけど、60センチを超えるような
たとえば、全紙サイズなんかを
小さくカットしたいとき、
定規の足りない部分から
とたんに道しるべを失って
ふわふわした線(及びカット)に
なってしまう。
そんな、もどかしい経験が
幾度かある。
*
そんなとき、こんな小説を
思い出す。
(ちょっと話は変わるけど)
「フラットランド」という
変な小説。
ふつうの世界に住む主人公が、
なんと2次元の世界に迷い込んでしまう、
という話。
2次元の世界から、
地面を通過する球体(ボール)を
観察した描写が面白い。
突然小さな点が現れたかと思うと
それが円となって
次第に大きくなり、
そうかと思うと、
ある時点から小さくなって
やがて消えていく。
とか、ほかにも、
ジェットコースターの
コースの影が地面に落ちると、
複雑に絡み合っているように
見えるけど、
実際のコースは
重なることはない。
こういう、平面からの視点が
描かれていて、面白い。
*
話を戻して、直線を引く時。
そんな「フラットランド」的な視点が
頭をよぎる。
平面の住人なら、定規なしでも
迷うことなく線をたどる方法がある。
*
まず、2つの点を決めて、
その2つが重なって見える地点に
立つ。
そして、点の方向に
線を引きながら歩いていく。
注意すべきことは、常に2点が
重なっている状態を保つこと。
すると、まっすぐの線を
引くことができる…
ということを時々妄想していた。
*
実は下関にある関門海峡に
その仕組みが実用されてるらしい。
本州と九州を隔てる
狭い海峡なのだけど、
一日の船が通る数がものすごく多い。
「交通の整理のために、
水の上に道路を作りたい…でも…」
という問題を解決したのが、
先ほどの平面を直線に歩く術。
その道しるべである2つの点として
導灯という灯台が
数か所に建てられた。
この灯台が重なるように
進行方向を定めると、水の上に
整理された交通が出来上がる。
太陽や月や星を、航路の目印に
していた時代と近しいような気もする。。
*
空間の作用を、コンテンツとして
意識的に取り入れた「箱絵本」なるものを
構想しているけど、
この関門海峡の導灯の仕組みは
なにか使えそうな気がする。。
2018/07/17