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幽霊から先はない

昔から長風呂が好きで、
うっかりすると一時間くらい
お風呂で過ごしている、
なんていうことがよくある。

本を読んだり、音楽聞いたりしていると、
頭に血が充満してきて、
ぽーっとする。
散漫力がみなぎってくる。

ところで、
湯船に15分くらい浸かっていると、
汗が珠のようにころころと湧き、
一回に心臓から送られる血量が
ふくらみはじめる。

そんな息が苦しくなってきた頃合いで、
半身浴にきりかえ、
浴槽の縁に座ってぼんやりする。

こないだ「静水圧」という単語を
知ったんだけど、
水の中にいるだけでも、
けっこうな重さがかかるらしい。

大人の男性が首までつかると、
大体600キロくらいの負荷が
体全体にのしかかってくる。

どうりで、いい運動をしたあとみたいな
疲労感があるわけだ。

なんでもないと思っていたけど、
お風呂って結構たいへんなことを
してるんだなあ。

さて、別の話題。
日高敏隆の本を読んでいたら、
蝶の話が書いてあった。

オスもメスも、同じような柄なのに、
どういうわけか、オスはちゃんと
メスを見分けて、アプローチを行う。

なぜかっていったら、
蝶は紫外線を見ているらしくて、
メスは白く光って見えるんだって。


紫外線の目を持ち合わせない
ぼくらにしたら、その違いはわからないから
まるで違う次元でものを見ている様が
SFマンガみたいで面白い。

実感として、光が視覚のすべてだと
思っていたので、紫外線の世界が
あることに、へえっと感心する。

引き続き、日高敏隆の本の続きを
読んでいると、
今度はギルバート・ライルという人の話題に。

幽霊はどういうときに生じるのか、
について。

幽霊が身近に迫るのは怖いけど、
怖い話は大好物なので、
読んでみると、なんてことはなかった。

わからないものを、
幽霊と呼びがち、なんだって。

つまり、幽霊はイマジネーションの
産物ではなくて、
「イマジネーションの欠如」の産物だという。

もっと言うと、「片付け方」であると。
そこから先は、もう原因を追究しない。
適度にそれっぽい理屈(怖い話)を
組み立てたら、そういうことに
しておきましょう。
そんなことにも思えてくる。

柳の下の怪奇現象も、
子どもを産んでまもなくして
亡くなった母親の霊だと思えば、
怖いながらも、どこかホッと、
そういうもんかと整理されてしまう。

それはそれでも面白いんだけど、
そこから先には行けなくなる。

人って、省エネの生き物なので、
使わないと、使わなくていいように
適応してしまう。

ごく身近にあるものや、
自然としていること
しゃべっている言葉などについて
「なんでもない」と思ってたことが、
オセロのようにひっくり返って
「え、そうだったんだ!」
という刺激に変わることがある。

そんなことを、自分なりの体感で、
さぐりたい。

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