幽霊から先はない
昔から長風呂が好きで、
うっかりすると一時間くらい
お風呂で過ごしている、
なんていうことがよくある。
本を読んだり、音楽聞いたりしていると、
頭に血が充満してきて、
ぽーっとする。
散漫力がみなぎってくる。
*
ところで、
湯船に15分くらい浸かっていると、
汗が珠のようにころころと湧き、
一回に心臓から送られる血量が
ふくらみはじめる。
そんな息が苦しくなってきた頃合いで、
半身浴にきりかえ、
浴槽の縁に座ってぼんやりする。
こないだ「静水圧」という単語を
知ったんだけど、
水の中にいるだけでも、
けっこうな重さがかかるらしい。
大人の男性が首までつかると、
大体600キロくらいの負荷が
体全体にのしかかってくる。
どうりで、いい運動をしたあとみたいな
疲労感があるわけだ。
なんでもないと思っていたけど、
お風呂って結構たいへんなことを
してるんだなあ。
*
さて、別の話題。
日高敏隆の本を読んでいたら、
蝶の話が書いてあった。
オスもメスも、同じような柄なのに、
どういうわけか、オスはちゃんと
メスを見分けて、アプローチを行う。
なぜかっていったら、
蝶は紫外線を見ているらしくて、
メスは白く光って見えるんだって。
紫外線の目を持ち合わせない
ぼくらにしたら、その違いはわからないから
まるで違う次元でものを見ている様が
SFマンガみたいで面白い。
実感として、光が視覚のすべてだと
思っていたので、紫外線の世界が
あることに、へえっと感心する。
*
引き続き、日高敏隆の本の続きを
読んでいると、
今度はギルバート・ライルという人の話題に。
幽霊はどういうときに生じるのか、
について。
幽霊が身近に迫るのは怖いけど、
怖い話は大好物なので、
読んでみると、なんてことはなかった。
わからないものを、
幽霊と呼びがち、なんだって。
つまり、幽霊はイマジネーションの
産物ではなくて、
「イマジネーションの欠如」の産物だという。
もっと言うと、「片付け方」であると。
そこから先は、もう原因を追究しない。
適度にそれっぽい理屈(怖い話)を
組み立てたら、そういうことに
しておきましょう。
そんなことにも思えてくる。
柳の下の怪奇現象も、
子どもを産んでまもなくして
亡くなった母親の霊だと思えば、
怖いながらも、どこかホッと、
そういうもんかと整理されてしまう。
それはそれでも面白いんだけど、
そこから先には行けなくなる。
*
人って、省エネの生き物なので、
使わないと、使わなくていいように
適応してしまう。
ごく身近にあるものや、
自然としていること
しゃべっている言葉などについて
「なんでもない」と思ってたことが、
オセロのようにひっくり返って
「え、そうだったんだ!」
という刺激に変わることがある。
そんなことを、自分なりの体感で、
さぐりたい。
2020/04/28